【12月31日 AFP】世界的に有名なブラジル出身の写真家セバスチャン・サルガド(Sebastiao Salgado)氏(70)は、地球を縦横無尽に駆け巡り、グローバリゼーションや移住、領土紛争などによる極限状況を記録してきた。そんなサルガド氏が最も心を痛めるのは、彼が「致命的に近視眼的な行為」と呼ぶ、人類による見境のない地球の略奪だ。

 世界を被写体にした8年にわたる長期プロジェクトの写真展「ジェネシス」のプロモーションのために香港(Hong Kong)を訪れていたサルガド氏はAFPの取材に対し、自然を制しようとする人間の欲望が世界を滅亡の危機に追いやっていると語った。「もし私たちが地球のことを顧みなければ、もうここには長くいられないだろう。私たちはもう地球の一部ではなくなっている。エイリアンだ」

 ドキュメンタリー写真家のサルガド氏は、ルワンダ、グアテマラ、バングラデシュなど100か国以上を旅し、飢餓や戦争、貧困、難民など現代世界の最も深い闇を記録してきた。彼が撮る、破壊された辺境の地や、搾取される弱者のコミュニティーのイメージは、深遠なモノクロ写真の世界を確立し、何世代もの写真家たちに影響を与えてきた。

 ブラジル中部の農村部で育ったサルガド氏は、経済専門家となるための教育を受けた。初めてカメラを手にしたのは20代半ば、妻のカメラを借りたときだったが、それからエコノミストのキャリアを捨てて写真家の道を選ぶことになった。「初めてファインダーをのぞいた瞬間、私の人生は変わった」とサルガド氏は振り返る。そして、1970年代前半にプロとなって以降、数多くの賞を受賞している。