■地球を食いつくす人類

 1990年代後半、ルワンダ大虐殺を取材した後に活動休止を余儀なくされた。数えきれないほどの死を目の当たりにし、重い精神的ダメージを受けたためだ。ブルドーザーで捨てられ山積みになっていく死体、その死体が放つ腐臭──その光景が頭から離れなくなった。「私は死に向かい始めた。私の体は病に侵され始めた」

 立ち直るために、彼は少年期を過ごしたブラジルの農場へ戻る決心をした。「丘陵地帯だった。子どものときは父と一緒に農場の高い場所まで歩いて上り、何時間もそこに座りながら空に浮かぶ雲と、雲間で交差する太陽の光を眺めていた。本当に壮大で素晴らしかった」。しかし、そのような自然がもうなくなってしまっていたことに慄然とした。湖は干上がり、熱帯雨林の大半は伐採されていた。

 心身ともに回復し始めると、サルガド氏は妻のレイアさんと一緒に、故郷にあった熱帯雨林を取り戻す植林に取り組んだ。「250万本以上を植えて、ようやく熱帯雨林が戻ってきた。ジャガーたちを救うことができ、鳥は170種以上が生息している」という。そして夫妻は、環境調査やサルガド氏の写真の発表を行う独自のエージェンシー、アマゾナス・イメージズ(Amazonas Images)を設立した。

 氷河の上を滑るペンギン、砂丘を渡る1匹のヒヒ、クジラの尾からしたたり落ちる水滴──野性をとらえたサルガド氏の鮮烈な写真の数々は、彼が人類に向ける非難と一体だ。サルガド氏の言葉によれば、人間は「徹底的な捕食者」だ。

 彼が撮る写真の数々は、人類への警鐘だと受け止められている。「私たちはすべてを破壊し始めた。牛を飼いならし、牢屋に閉じ込め、そして何百万頭もの牛を作るようになった。自分たちが食べるために」(c)AFP/Aaron TAM