【12月22日 AFP】国際宇宙ステーション(International Space StationISS)では、金物店から工具類を調達するのは不可能だが、だからといって必要なものが入手できないという訳でもなさそうだ。ISSのクルーはこのたび、ほぼ無重力状態でも動作可能な3Dプリンターと地上から電子メールで送信された形状データを使って、工具を作ることに初めて成功した。

 今回、ISS内で作られたのはラチェット・レンチと呼ばれる工具。ISSに積み込まれている3Dプリンターを開発した米カリフォルニア(California)州の企業メイド・イン・スペース(Made in Space)が工具の設計も手がけた。これまでにもISSで3Dプリンターが使用された事例はある。ただし出発前に試作段階を経たデータを携帯し、それをプリントすることにとどまっていた。

 メイド・イン・スペースによると、今回のケースでは、工具の設計と試作を地上で行った後、データが電子メールでISSの3Dプリンターに送信されたという。造形には約4時間を要したとされる。同社は「補助材料を使わず、可動部品を含めて一度にプリントできるように設計した。微小な重力状態で部品が浮遊するのを防ぐため、工具の部品と構造物を一体化する必要があった」と説明した。

 メイド・イン・スペースは、カリフォルニア州の研究所で作った試作品を米航空宇宙局(NASA)に送り、安全性についての確認を行った。ISSの3Dプリンターにデータが送信されたのはその後だという。同社は、発案から完成までの期間について1週間未満だったと付け加えている。

 工具はISSで3Dプリントされた他のものとともに地球に持ち帰られる。地上の重力がある状態でプリントされた造形物と比較し、何らかの相違点があるかを調べる予定だ。(c)AFP