【12月20日 AFP】ベッドで眠る姿や食べている姿、下着姿でも撮る。減量手術の傷痕も隠さない──被写体となっているのは、米ニューヨーク(New York)ブルックリン(Brooklyn)在住の写真家、ジェン・デービス(Jen Davis)さん(36)だ。自分が撮影する側にいようが撮影される側にいようが、常に同じようにリラックスしているという。

 デービスさんは自分を被写体にして写真を撮り続けることで、自らの肥満問題を探っていこうと考え、まだ学生だった2002年に「自分探しの旅」を始めた。撮りためた写真は『イレブン・イヤーズ(Eleven Years)』と題した写真集として発売されたばかりだ。

 AFPのインタビューでデービスさんは「春休みのバカンスでビーチに行ったとき、しばらく水着になったことがないなと思ったら、なんだか落ち着かない気分になった。これが自分の中の不安を見つめるきっかけとなった」と語った。この瞬間をとらえた写真「プレッシャー・ポイント(Pressure Point)」には、ぎこちない様子でビーチに座るデービスさんと一緒に、日に焼けてスリムな体の友人がビキニ姿で写っている。

 こうして、デービスさんは日常のさまざまな場面で自分の写真を撮り始めたが、最初は洗濯物を干したり、友人と食事をしたりしている「無難な」場面を選んでいた。「当時は写真を見る人のことは考えていなかったし、写真を誰かに見せなければいけないわけでもなかった。だから、見苦しいような写真も平気で撮っていた」

 しかし、プロジェクトが進むうちに、だんだんと自分の肉体をもっとさらすことに挑戦するようになった。ズボンのウエストを引っ張り上げている姿や、あごのクローズアップなども写すようになった。「自分も知らなかった部分。本当にプライベートな部分を直視していることに気付いた」という。

 デービスさんは何百枚ものセルフポートレートを撮りためていった。だが10年近く経っても、体重は一向に減らなかった。転機が訪れたのは2011年。食べる量をコントロールできる機器を胃の上部に取り付ける手術を受けようと決意した。術後1年で52キロの減量に成功したデービスさんは、これまで余分な体重がどれほど自分の人生を支配していたかを実感するようになった。

 減量前のことをデービスさんはこう振り返る。「体のことがすべてで、いつも嫌な気分で、人目にさらされているようなプレッシャーとの闘いだった。社会に裁かれているように感じていた。地下鉄でじろじろとみられたり、笑いものにされたりしているのが分かった。たとえ言葉に出さなくても、皆、私のことをじっとみたり、あきれた表情をしたりしていた」

 一番、腹立たしかったのは、周りの人たちがデービスさんの体重について話すときに、親切心のつもりで話を抑えようとするときだった。「『あなた顔は可愛いんだから、体形を変えないと』とか『かなり太っているけれど可愛いんだから、痩せたらハッピーになるし彼氏もできるわよ』なんて言われることがよくあった。出席した結婚式である女性にこれを言われたときには、思わず泣き出してしまった」

 自分の問題は、心を慰めるために食べてしまう心理的欲求にあるという結論に達したデービスさんは、今の体重を維持するためにこれからの人生でも努力しないといけないと心に誓っている。(c)AFP/Helen ROWE