【12月18日 AFP】8年間にわたり金星の詳細な分析調査を行ってきた無人探査機「ビーナス・エクスプレス(Venus Express)」が燃料切れとなり、金星の有毒大気に落下して燃え尽きる見込みだ。無人探査機を通じて観測を続けていた欧州宇宙機関(European Space AgencyESA)が発表した。

 ESAでビーナス・エクスプレスの運用責任者代理を務めるアダム・ウィリアムス(Adam Williams)氏は16日、有毒ガス上の軌道を飛行していた同機について「計画通り、軌道の境界を最後の落下に向けて押し下げつつある」と述べた。

 ビーナス・エクスプレスの最期は今後数週間以内に訪れる見通しだ。同機はこれまで、地球とほぼ同じ大きさと質量を持つ金星についてのデータを科学者らに提供し、重要な結論へと導く手助けをしてきた。

 同機が収集したデータからは、金星の地質学的な活動が今でも活発であり、かつては地球と同じような海が存在した可能性があることを明らかにした。

 金星は、その魅力的な名前とは裏腹に、現在は地獄のような惑星となっている。その大気は非常に高温で毒性が高く、また濃密で大気圧も高いため、金星に人間が降り立ったなら、融解、窒息、圧殺の危険に同時にさらされることになるだろう。

 金星の焼け付くような表面温度は477度で、太陽系の中で最も高い。

 2005年11月に打ち上げられたビーナス・エクスプレスは、2006年4月11日に金星の周回軌道に投入され、同惑星の探査を開始した。当初のミッションは数回延長され、昨年の春にESAの管制チームは同機を最後の冒険へと送り出した。

 管制チームは2014年中ばに、金星に向けて制御下で落下させる指令をビーナス・エクスプレスに送信した。同機はこの指令により、今まで未知だった大気の層を調査する目的で、金星にこれまでになく近づいた。

 有毒大気への旅を乗り切ったビーナス・エクスプレスは、7月に通常の軌道に戻った。だがその後、管制チームは同機が徐々に減速し、金星の方向にまた引き戻されていることに気が付いた。そして11月末には同機との通信が限定的となり不安定になった。

 これまでに行われたビーナス・エクスプレスの調査では、約250万年前の溶岩流が金星に存在することが判明している。ESAは、この250万年前という時期について「地質学的な時間尺度では、ほんの1日前か、もしかするとそれよりずっと短い時間に相当するかもしれない」と説明した。

 また、金星の大気に水素が含まれることは、金星にかつて大量の水か、あるいは地球と同じ海が存在していたことを示唆するものだ。ただ現在は、その大半は消失している。

 ESAでビーナス・エクスプレス計画に参加した科学者のハカン・スヴェデム(Hakan Svedhem)氏は、「科学データを収集する段階はこれで完了となるが、科学界は今後数年間にわたり、収集されたデータの分析に取り組むことになる」と話している。(c)AFP