【12月23日 AFP】オリーブオイルをふんだんに使った「地中海式ダイエット」は元々安く収まるものではないが、南欧の産地でのオリーブ不作の影響でオリーブオイルの値段がさらに上がりそうだ。

 南欧では今年オリーブが不作で、オリーブオイルの卸売価格が急上昇している。世界中の消費者は大幅な値上げを受け入れていかなければならないようだ。

 今夏の異常気象による影響が最も甚だしいのは、芳香漂うエキストラ・バージン・オリーブオイルの世界的な品質基準とされている中部イタリアのトスカーナ(Tuscany)州とウンブリア(Umbria)州だ。また、オリーブオイルで世界の総生産量の半分を占めるスペインでは、酷暑や干ばつ、バクテリアによる被害を受け、生産量が半減する見通しだ。

 さらに、南イタリアでは異常気象でハエが大繁殖し、オリーブの木が全滅の危機にさらされている。トスカーナ(Tuscany)州フィエーゾレ(Fiesole)で、チェーザレ・ブオナアミーチ(Cesare Buonamici)氏が経営するオリーブ加工工場では例年、この時期はクリスマス近くまでフル稼働が続くが、今年はこのハエの発生でオーガニック栽培のオリーブの収穫が落ち込み、工場の機械はどれも休止したままだ。生産は半分に落ち込んだと、ブオナアミーチさんは嘆く。

 オリーブにつくハエの成虫はオリーブの実に穴を開けて、その中に卵を産み付けるが、オリーブの実は生まれてきた幼虫に食い荒らされる上、その部分からカビの菌が入り込んでしまう。このハエは気候の影響を受けやすく、冬が寒く夏が非常に暑い中部イタリアならば通常、繁殖を管理できる。しかし今年は北欧のような冷涼な気温が続き、さらに大雨が長引いたため、ハエの繁殖に適した条件が揃ってしまった。

■生産ゼロの決断も

「今年はオリーブオイルを1本も生産できなかった」と話すのは、中部イタリア・ラツィオ(Lazio)州にあるワインとオリーブオイルの農園で、農学専門家として働くフェデリコ・レシチンスキ(Federico Leszczynski)氏。

 4ヘクタールの敷地に約1700本のオリーブが植えられているこの農園では、豊作の年には500ミリリットルの瓶入りエクストラ・バージンオイル1万本を生産している。しかし今年「生産量はイタリア全土で約35%落ち込むと言われているが、ここでは70~80%の減産だ。使えるオリーブの実が少なく、収穫しても意味がないので、今年はオイルをまったく生産しないことに決めた」と語った。

 国際オリーブ協会(International Olive Council)によると、イタリア産オリーブオイルの卸売価格は13年以降、37%上昇した。しかしブオナアミーチ氏は、自分の工場で作っているような最高品質のオイルの場合、値上げ幅はさらに大きくなるとみており、「消費者が手に取るときの末端価格は60%以上、上がりそうだ」とAFPTVに話した。

 一方で、イタリア産オリーブに長年、水をあけられてきた感のあるギリシャやチュニジアは今年豊作だった。これらの国では、まるで高級ワインのように語られることもある高付加価値のオリーブオイル市場のシェアを少しでも伸ばせないかと期待が高まっている。

 また高級オイルの価格高騰で、従来のオリーブ生産地ではない場所でも栽培に乗り出す機運が高まっている。中でもオーストラリアは「まだ目覚めていない一大生産地」としてオリーブオイル業界で有望視されている。(c)AFP/Angus MACKINNON