【12月16日 AFP】オーストラリア最大都市シドニー(Sydney)中心部のカフェで15日に発生した立てこもり事件で、重武装した警察が翌16日に突入し、イラン出身の犯人と人質2人が死亡した。自称「イスラム教指導者」の男が17人を約17時間にわたり人質に取ったこの事件は、衝撃的な結末を迎えた。

 店内にいた従業員と客の一部が自力で脱出した後、米警察特殊部隊(Special Weapons and TacticsSWAT)のように武装した警察官らがカフェ内に着発式の手投げ弾を投げ入れて発砲を開始。現場は爆音と閃光(せんこう)に包まれた。

 ニューサウスウェールズ(New South Wales)州警察のアンドルー・シピオーネ(Andrew Scipione)本部長は記者会見で、銃撃戦後に警察が店内に踏み込み、50歳の「単独犯」を射殺したと発表した。さらに、人質になっていた34歳の男性と38歳の女性が搬送先の病院で死亡が確認された。

 シピオーネ本部長は「個人による犯行だった。市民生活に破滅や変容をもたらすものでは断じてない」と述べた。

 警察が事件の終結を発表し、救急隊が人質らの元へ駆けつけると同時に、爆弾処理ロボットが建物内を捜索したが、爆発物は見つからなかった。

ABCテレビをはじめとする複数の地元メディアはイスラム教の旗を掲げた犯人の男はイラン出身で自称「聖職者」のマン・ハロン・モニス(Man Haron Monis)容疑者だと伝え、ひげを生やし白いターバン姿の同容疑者の写真も公表した。同容疑者は過去に複数の暴力事件に関与して逮捕され保釈中だったと伝えられている。

■「前科のある個人の犯行」

 かつてモニス容疑者の弁護人を務めたマニー・コンディットシス(Manny Conditsis)弁護士はABCに対し、「組織によって企図されたテロ行為ではない。前科のある個人が常軌を逸した行動に出た」と語った。

 また豪紙オーストラリアン(Australian)は、モニス容疑者が「イスラム教指導者」を自称し、亡くなった兵士らの遺族に攻撃的な手紙を送り付けていたことや、同容疑者の元妻の殺人事件の従犯容疑で逮捕され保釈されていたと伝えている。同容疑者は1996年に難民としてオーストラリアに入国後シドニー南西部に居住し、「末端のイスラム主義者と認識されていた」としている。(c)AFP