■器用なホモ・エレクトス?

 次に研究チームは、走査型電子顕微鏡を用いて貝殻をさらに詳細に調べた。

 その結果、一つの貝殻の縁が磨かれ、滑らかになっていることが分かった。これは、貝殻がものを切ったりこすったりするための道具として使われていたことを示唆している。

 さらに別の貝殻には、サメの歯などの先が鋭くとがったものでジグザグ模様の溝が刻まれていた。この模様は、これまで最古とみられていたものより30万年以上古い、議論の余地のない「彫り刻んだ跡」だ。

 幾何学模様は、認知行動と神経運動能力の表れと考えられている。これらは現生人類ホモ・サピエンス (Homo sapiens) の属性であるとする見方が、これまで圧倒的多数を占めていた。

 今回発見された新たな証拠は、これまで頭が鈍く、不器用と考えられていたホモ・エレクトスの固定イメージを打ち破るものだ。

 論文は、ホモ・エレクトスについて、二枚貝から効率的に食料を得ることができるほど利口で、薄くて滑らかな貝殻を道具として利用できるほど器用な上、抽象的な模様をそのなかの1つに彫り刻むことができるほど賢かった可能性があるとしている。(c)AFP/Richard INGHAM