【12月2日 AFP】2014年春、米首都ワシントン(Washington D.C.)のアメリカン大学(American University)に置かれた男子学生の友愛クラブ「イプシロン・イオタ(Epsilon Iota)」のメンバーが書いた複数のメールが流出し、米国では大きな社会的な問題となった──。メールには、女子学生との性的行為に至るための方法──言葉巧みにそそのかしたり、薬を飲ませたりするやり方──が書かれていた。

 大学非公認の同クラブに所属するメンバーから送信されたメッセージには、よりナイーブな1年生を狙うことや誰にも見られずに行為に及ぶヒントなどが記されていた。これらは世間を驚愕させるのに十分な内容だった。

 そのなかの一つには、パーティーの前に女性にアルコールを飲ませることが提案されていた。彼女たちを「リラックスさせ安全だと思わせるため」とあり、「女どもに、ちょうどいい具合で薬を効かせるのには素晴らしいアイデアだ」とも書かれていた。

 アメリカン大学に限らず、いま全米の大学は、キャンパス内で急増している性的暴行への対応を迫られている。

 米誌ローリング・ストーン(Rolling Stone)は11月、名門バージニア大学(University of Virginia)での性的暴行問題を取り上げた。同誌によると、同大の男子学生が所属する友愛クラブのパーティーにおいて集団での性的暴行が行われた疑いがあるとし、詳しい図表を掲載しながら大学当局の不十分な対応について指摘している。

 同誌の記事を受けて、大学側は男子学生と女子学生の友愛クラブでの活動を来年1月まで停止することを決定。学生、教職員、卒業生、その他の関係者を集めて、キャンパス内での性的暴行について対策会議を開くことを発表した。

 アメリカン大学の学生たちも行動に出た。2年生のアマンダ・グールドさんは、「ノー・モア・サイレンス(もう黙っていはいない)」という団体をつくり、1700人の署名を集めて、メールを書いた人物の退学を大学側に求めた。だがグールドさんによると、学校側からの返答は、問題のクラブが非公式であるため関与できないとの一点張りだという。

 それでもグールドさんはキャンパス内でデモを組織して訴え続けた。イプシロン・イオタについては、性的暴行を目的に活動していると多くが考えているとしながら「大学はもう臭いものに蓋をすることはできない」と述べている。

 学長との面談は最後まで実現しなかったが、グールドさんはもっと影響力のある人物から間接的な支援を勝ち取った──バラク・オバマ(Barack Obama)大統領だ。

 キャンパス内での性犯罪に対する怒りが拡大するなか、政府が全米規模でのキャンペーン「It's on us(私たちの責任)」を立ち上げた。このキャンペーンでは、学生ひとりひとりに対して問題の解決に取り組むよう呼びかけが行われている。パーティーで酒に酔い、標的にされそうな女性を映すキャンペーンの動画では「傍観者になってはいけない。性的暴行を止めよう」とのメッセージが視聴者に投げかけられている。

 9月にキャンペーンが立ち上げられた際、オバマ大統領は、全米の大学生5人に1人がレイプの被害にあっているが、被害が届け出されるのはそのうちのわずか12%にとどまっていると述べていた。