【12月2日 AFP】米国で黒人青年が白人警察官に射殺された事件をめぐり大規模な抗議行動が続く中、人種間の平等は果たして実現可能なのだろうかという問いが改めて投げ掛けられている。2日に新アルバムを発表するヒップホップ界の伝説的グループ「ウータン・クラン(Wu-Tang Clan)」は、見通しは暗いが希望だけはあるかもしれないと歌っている。

 ウータン・クランが7年ぶりに再結集して発表するスタジオ・アルバム「ア・ベター・トゥモロー(A Better Tomorrow)」は、トレードマークのカンフー映画からのサンプリングをちりばめた洗練されたリズムに乗せて警察による残忍な行為やその他の社会問題を真っ向から取り上げている。

 2日にリリースされる同アルバムのタイトルトラックは、米国の黒人運動指導者マルコムX(Malcolm X)の暗殺を想起させる内容で、黒人たちに「立ち上がれ、強くなれ」と呼び掛けている。

 メンバーの1人、レイクウォン(Raekwon)のラップはこう続く。「俺たちは正義が欲しい/保護し奉仕するはずの警察は/俺たちを野生動物みたいに撃つ/あいつらの神経は無慈悲な殺人鬼と同じ/制服を着たやつらが若い黒人を殺している/地球は流された多くの血のために泣いている」

 米国では現在、ミズーリ(Missouri)州セントルイス(St. Louis)郡のファーガソン(Ferguson)で黒人青年マイケル・ブラウン(Michael Brown)さん(当時18)が白人警察官のダレン・ウィルソン(Darren Wilson)氏に射殺された事件で、大陪審がウィルソン氏を不起訴処分としたことで抗議活動が広がっており、新アルバムで歌われているメッセージがとりわけ切実に響くタイミングでの発表となった。

 しかしこのアルバム自体は、ファーガソンでの事件発生のずっと以前に着手されており、メンバーは2011年からすでに言及している。当初はグループ結成20周年となる昨年のリリースが検討されていたが、グループのメンバーのレイクウォンとRZAの意見対立で制作が一時中断され、リリースが遅れていたという。(c)AFP/Shaun TANDON