【11月28日 AFP】14-15フィギュアスケートグランプリ(GP)シリーズ第6戦、NHK杯(NHK Trophy 2014)を控え、ソチ冬季五輪金メダリストで世界選手権王者の羽生結弦(Yuzuru Hanyu)が27日、中国杯(ISU Grand Prix of Figure Skating Cup of China 2014)での衝突事故について、「今ここにいるのが奇跡」と語った。

 中国杯で羽生は、練習中に中国の閻涵(Yan Han、ハン・ヤン)と衝突して頭部から出血。あごも数針を縫うけがをし、脳振とうの影響が心配される中で競技に臨んだ。しかし、出場を認めた日本スケート連盟(Japan Skating Federation)に対しては、批判の声が上がっている。

 28日から開幕するNHK杯に向けて、大阪で記者会見に臨んだ羽生は、「自分やコーチ陣、スケート連盟に対して厳しい声があるのは知っています。あれだけの衝突の後ですから、リスクはありましたし、ある意味、ここにいること自体が奇跡に近い」と話した。

 羽生のフリースケーティング(FS)出場が認められたことについては、日本の元五輪選手が協会を激しく非難していた。オーストラリアでは26日、クリケットの試合中に選手が頭部に打球を受け、その後に死亡する事故が起きている。

 会見でクリケット選手の事故について問われた羽生は、「それは初耳ですけど、自分が生きていることに感謝したいです」と話した。

 羽生はまた、中国杯での事故について、「心配をおかけしたことをみなさんにお詫びします。セカンドインパクトの話も聞きましたが、医師の診断をしっかり受けた上で、危険性がないことを理解して滑りました」とコメントしている。

 神経医学の専門家の話によれば、最初の衝突のダメージが消えないうちに、もう一度、頭部に損傷を受けた場合、死亡のリスクは50パーセントを超えるとも言われている。

 19歳の羽生は、「ほんの少しずれていたら、僕はいなくなっていたかもしれない。だけど、スポーツというのは自分の限界に挑むもの。目まいはそんなになかったし、出血も見た目ほどひどくはなかった。だから医師とコーチのアドバイスをしっかり聞いて、棄権はしないと決めました」と話した。

 羽生は結局、ブライアン・オーサー(Brian Orser)コーチに「ヒーローになるべき時は今じゃない」と諭されながらもFSに臨み、ジャンプでは5度も転倒した。大会を終えて日本へ帰国した時、羽生は車いす姿だった。

 しかし羽生は、すでに大会で滑れる状態にあると話し、「100パーセントではないですけど、GPファイナルに出たいし、今できる最高の演技をしたい。まだ少し痛む箇所もあるけれど、痛みは落ち着いてきています。中国杯についてはしっかり診断を受けた上で出場しましたし、あまり深刻に受け止めないでいただければと思います」とコメントした。

 羽生はNHK杯で3位以内に入ることができれば、12月にバルセロナ(Barcelona)で行われるGPファイナルの出場が決まる。(c)AFP/Alastair HIMMER