【11月21日 AFP】国連(UN)は20日、政府軍と親ロシア派武装勢力の対立が続くウクライナ東部で、停戦協定が結ばれた今年9月5日以降も1000人近くが死亡したと発表した。1日平均13人が命を落としている計算になる。

 国連がウクライナに派遣している人権監視団は、9月5日から今月18日までの死者が957人に上ったと報告。国連のゼイド・ラアド・アル・フセイン(Zeid Ra'ad Al Hussein)人権高等弁務官は声明で、「犠牲者名簿は長くなる一方だ。ウクライナにおける政治的こう着状態を受けて、女性や子ども、少数派やさまざまな社会的弱者を含む民間人が引き続き窮状に置かれている」と指摘した。

 衝突が始まった今年4月中旬から今月18日までに死亡した人は、7月にウクライナ上空で撃墜されたマレーシア航空(Malaysia Airlines)MH17便の乗客乗員298人を含め、4317人に上っている。

 またこの報告書では、政府軍と親露派双方の人権侵害についても詳述している。

 政府軍のある兵士は、「ウクライナに栄光あれ」という入れ墨を入れていた右腕を親露派におので切断されたと訴えている。また、ドネツク(Donetsk)で政府軍に拘束されたある親露派戦闘員は、顔にポリ袋をかぶせられて窒息させられそうになった上、繰り返し殴打されたと明かしている。

 さらに、ウクライナ国内で避難民として登録された人の数は、9月中旬の27万5489人から、今月19日には46万6829人にまで膨れ上がったという。

■米副大統領がキエフ訪問

 米国のジョー・バイデン(Joe Biden)副大統領は20日、ウクライナの首都キエフ(Kiev)を訪問した。翌21日は、現在東部で続いている衝突の引き金となった親露の前政権に対する抗議行動の開始からちょうど1年に当たる。

 米国は今年9月、ウクライナに対し4600万ドル(約54億円)の治安対策費を含む5300万ドル(約63億円)の支援を申し出ているが、アルセニー・ヤツェニュク(Arseniy Yatsenyuk)首相は、バイデン氏の訪問中に米から追加支援の申し出があることを期待していると述べている。

 これに対しロシアは、ウクライナ政府軍への支援を表明している米国をけん制。ニコライ・パトルシェフ(Nikolai Patrushev)安全保障会議書記は、米国の支援が現実のものになればウクライナ東部での衝突が「激化するだろう」と警告している。

 欧米諸国やウクライナは、ロシアがウクライナの分離独立派に部隊派遣や軍備調達による支援を行っていると非難しているが、ロシアはこれを否定。ウクライナをめぐる過去7か月にわたる対立で、東西の外交関係は冷戦(Cold War)後最悪の状態に陥っている。(c)AFP/Katherine HADDON