落雷、気候変動で2100年までに50%増も 米研究
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【11月14日 AFP】森林火災や死亡事故の原因となり得る落雷の発生件数は、気候変動が原因で今世紀末までに50%ほど増加する可能性があるとの研究論文が、米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。
米カリフォルニア大学バークレー校(University of California, Berkeley)などの研究チームが発表したこの論文は、地球温暖化が2100年までにどのように進行するかを予測する11種類の異なる気候モデルに、降水量と雲の浮力の測定値を適用した結果に基づくものとなっている。
同大の気象学者、デービッド・ロンプス(David Romps)氏は、温暖化が進むにつれ、雷雨の規模はますます爆発的になると述べる。「温暖化が原因で、大気中に含まれる水蒸気の量は増加する。『燃料』が増えるほど、点火した時に爆発の規模が大きくなる可能性があるのと同じだ」
雷が受ける影響についてのこれまでの推算では、降水量との密接な関連性がない間接的な手法が用いられていた。そこから導き出された結果は、温暖化で気温が1度上昇するごとに、雷の発生数が5~100%の範囲で増加するというものだった。
一方、今回の最新研究では、大気中の空気を上昇させるエネルギーと降水率とを合わせて考慮する手法に基づいている。
研究チームは、無線機付き気象観測機器(ラジオゾンデ)を搭載した気球を米国各地で上げ、対流有効位置エネルギー(Convective available potential energy、CAPE)を1日に2回測定した。
ロンプス氏は「CAPEは、大気にどの程度の『爆発性』があるかの尺度になる」と説明し、「今回の研究で、降水量とCAPEを組み合わせて用いることで雷を予測できるとの仮説を立てた」と続けた。
米国立測候所(National Weather Service、NWS)の観測データを用いて試算した結果、降水量とCAPEを知ることで、約77%の落雷の変動を予測できることを研究チームは明らかにした。
「落雷の予測を行う上でこの手法がいかに信じられないほど有効に機能するかに、われわれは非常に驚いた」とロンプス氏は話した。
■落雷の増加
降水量とCAPEという2つのパラメーターを複数の気候モデルに適用した結果、世界の平均気温が1度上昇するごとに、落雷が約12%増加することが分かった。気温が今世紀末までに4度上昇すると、落雷は50%近く増加することになるという。落雷は現在、世界で年間2500万回発生している。
落雷の発生数が増加すると、死傷者が増える可能性がある上、自然や野生動物に破壊的な影響が及ぶ恐れも生じる。
落雷率の増加が原因で、乾燥した森林地帯で起きる山火事の件数が増加し、多数の鳥や他生物が全滅したり、近隣の住民が危険にさらされたりする結果を招く恐れがある。(c)AFP