【11月12日 AFP】国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)は12日、カタールで開催予定となっている2022年サッカーW杯(2022 World Cup)の関連施設の建設現場で、外国人労働者が劣悪な待遇を受けていることについて、改善の姿勢は「まったくもって不十分」だとしてカタール当局を非難した。

 アムネスティ・インターナショナルで、難民と移民の権利を担当するシェリフ・エルサイード・アリ(Sherif Elsayed-Ali)氏は、「2022年のW杯は強制労働と搾取の上に成立した、などということにしないためにも、早急な措置を講じる必要がある」と話した。

 エルサイード・アリ氏は発表した声明の中で、開催地が決まってから4年が経過しているものの、「現時点でカタールの出稼ぎ労働者に対する酷使への対策は、動くという約束や、法律の草案の段階にすぎない」と述べた。

 カタールの外国人労働者の待遇については、建設現場で死者が出たと報じられて以来、世界各国から非難が殺到している。

 今年5月には国際サッカー連盟(FIFA)に対し、人権団体からカタールでの2022年大会開催を見直すよう大きな圧力がかかった。

 これを受けてカタールは、建設現場での安全性、労働者の住居や賃金など、国外からやってきた労働者の待遇改善に乗り出すことを決めていた。

 しかし、エルサイード・アリ氏は、「6か月が過ぎた。しかし、片手で数えられるほどの限定的な措置が5月に発表されただけで、しかもそれすらも部分的にしか実行されていない」と話している。

「総合的な観点から、ここまでの歩みはまったくもって不十分だ」

 一方、カタールのタミム・ビン・ハマド・ビン・ハリファ・サーニ(Shaikh Tamim Bin Hamad Al-Thani)首長は、9月22日の米CNNのインタビューで、法律が改正された点を強調している。

「新たに施行された法律もあるし、改正された法律も数多くある」

 しかし、エルサイード・アリ氏は、「出国許可制度の廃止や、虐待に近い資金援助のシステムの全面改訂など、根本的な変更が一番必要な部分については、改善が遅々として進んでいない」として、カタール政府の取り組みを切り捨てた。

 国際労働組合総連合(International Trade Union ConfederationITUC)は6月、2022年の大会開幕までに、4000人もの外国人労働者が建設現場で死亡する可能性があると警告している。

 エルサイード・アリ氏は、「人権の歴史に生じたこの巨大な穴を、今すぐ塞ごうと動かなければ、カタールの信用は失墜し、人権保護の姿勢を疑われることになりかねない」と話した。

 アムネスティ・インターナショナルは、カタール政府に対し、「具体的な」手段を講じて、「出国許可の制度を疑問の余地なく廃止」し、「出稼ぎ労働者の死因の独自調査を始める」ことを求めている。

 さらに団体側は、「労働者が雇用主を訴えるのに必要とする、法外な訴訟費用を引き下げる」こと、そして「搾取を行っているあっせん業者と雇用主の名前を公表する」ことも求めている。

 カタールW杯については、投票過程での不正疑惑、さらに酷暑が予想される夏に開催が予定されている点も、批判の対象となっている。(c)AFP