【11月6日 AFP】約6600万年前の恐竜王国に、地リスの一種グラウンドホッグ(別名ウッドチャック)に似た「風変わりな」生物が生息していたとの研究論文が、5日の英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 体重約9キロのこの生物「ビンタナ(学名:Vintana sertichi)」は、中生代の南半球に生息していたことが知られている哺乳類の中で最大のものとなる。

 論文を発表した米ストーニーブルック大学(Stony Brook University)のデービッド・クラウス(David Krause)氏率いる研究チームは、ネズミほどの大きさしかない同時代の哺乳動物において、「スーパーヘビー級」であるビンタナは生命の歴史の中で重要な位置を占めることになったとし、またその発見は、恐竜絶滅後に地球の支配者となる哺乳類の進化の歴史が、これまで考えられていたよりもさらにさかのぼることを意味すると説明した。

 この奇妙な生物のものとみられる長さ13センチの頭骨の化石は、マダガスカル(Madagascar)島から米ニューヨーク(New York)州の大学研究室に運ばれた重さ70キロの砂岩塊の中から偶然発見された。クラウス氏は「この化石が示す解剖学的特徴の奇妙な交じり合いは、古生物学者の誰もが予想すらできなかったものだ」と語る。

 現代に生息するウッドチャックのほぼ2倍の大きさのビンタナは、げっ歯類に似た門歯と耐磨耗性のある臼歯を持っていた。これらの歯はおそらく木の根や種、果物などをかみ砕いて食べるのに使われたのだろう。大きな目は、暗いところでものを見ることを可能にしたと思われ、また内耳の形状と大きさは、聞き取れる音の周波数が人間よりも高かったことを示唆している。動きは俊敏だった可能性が高く、その大きな鼻腔からうかがえるものは鋭い嗅覚だ。

 原始的な特徴とより特化した機能を「著しく奇妙に」併せ持つビンタナは、超大陸ゴンドワナ(Gondwana)に生息していた「ゴンドワナテリウム」と呼ばれる謎の初期哺乳類の新種と考えられる。ゴンドワナテリウムについては、ほんの30年前まではまったく知られていなかった。

 今回の発見により、ゴンドワナテリウムがどのような習性を持ち、恐竜の衰退期における世界でどのような位置を占めていたかに関する洞察が初めて得られることになった。また哺乳類の系統樹は再構成され、哺乳類の起源が2500万年ほどさかのぼることになる。

 ビンタナは、マダガスカル島がインドから分離した後の約2000万年間の進化の産物だ。マダガスカル島は、超大陸ゴンドワナの分裂期に約3000万年間、インドとつながっていた。

 だがこの動物の系統は結局、姿を消してしまう。「これは、進化による『哺乳類性』の実験の失敗例の1つだ」とクラウス氏は話している。(c)AFP/Mariette LE ROUX