【11月6日 AFP】英ロンドン(London)の北朝鮮大使館では今週、北朝鮮人美術作家による展覧会が開催されている。同大使館が施設内部を一般に公開するのは極めてまれだという。

 ロンドン西部イーリング(Ealing)にある、赤レンガ造りの2階建ての北朝鮮大使館での展覧会では、社会主義リアリズムの流れを汲む美術作家4人による、祖国の風景を描いた作品など約60点が展示されている。

 唯一公開されている部屋での内覧会には、作家の4人もこぎれいな服装で出席。全員、北朝鮮の国旗を背に故金日成(キム・イルソン、Kim Il-Sung)国家主席と故金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong-Il)総書記の顔写真があしらわれたピンバッジを胸に着けていた。作家のひとりであるホ・ジェソン(Ho Jae Song)さんは、「平壌(Pyongyang)と同じく、穏やかでロマンチックなごく普通の人々が暮らすロンドンは美しい都市だ」と通訳を通じて話した。ただ、英アート界に存在する「自由」について質問が及んだ際には、「我々にも自由がある!」とホさんの通訳がすかさず割って入った。

 この展覧会の主催者で、旧ソビエト連邦(Soviet Union)のアートを専門とするデービッド・ヘザー(David Heather)氏は、「文化は市民レベルの関係促進にとてつもなく重要な役割を果たすものと信じている」と話し、「彼らは3週間の滞在期間中に、ロンドンの美しい部分とそうでない部分を見聞している」と続けた。北朝鮮のプロパガンダポスターの収集家でもあるヘザーさんによると、滞在中の予定にはオランダの画家レンブラント(Rembrandt)や英国の巨匠ウィリアム・ターナー(William Turner)の展覧会も組まれているという。

 ただ作家たちには、滞在しているロンドンから特に深い印象を受けた様子は見られない。同展に参加している別の作家のホン・ソンイル(Hong Song II)さんは、ロンドンで楽しんだことは何かとの質問に対して「特にない」と答え、影響を受けた西洋の芸術家は誰かとの質問に対しても「誰もいない」と答えた。

 一方、北朝鮮監視ウェブサイトのNKニュース(NK News)による公式インタビューでホさんは、自らを含めた4人が所属する同国の美術工房、万寿台創作社(Mansudae Art Studio)の仕事を称賛している。

 700人の美術作家を擁する万寿台は、旧ソビエト芸術に影響を受け、体制に沿った無数のポスターや彫像のほか、風景画や生け花なども制作している。

 ホさんはこのインタビューで、同社の作家たちは「通常」午前9時から、1時間の休憩を挟んで午後6時まで働くと説明。「(勤務時間は)個々人に任せられている。インスピレーションを受け、制作に集中する時には徹夜もある」と付け加えた。(c)AFP