【11月10日 AFP】ジャーナリストのサラさんは、44歳となった今も独身だが、子どもを持つ夢をまだ持ち続けている。38歳のテレビプロデューサー、スザンナさんは、年下の交際相手の心の準備ができるのを待っているところだ。

 米ニューヨーク(New York)に住むこうした女性たちは、自分の希望を生かしておくために、最近人気が高まっている卵子凍結に数万ドル(数百万円)を費やしている。

 米交流サイト(SNS)大手フェイスブック(Facebook)は最近、従業員の卵子凍結費用の補助を始めた。米アップル(Apple)もまた、同様の措置を来年1月から開始する。

 スザンナさんは、たとえ妊娠の確率が低いとしても、こうした医学の進歩を「保険」として活用したい、と冗談めかして語った。

 女性の卵子の受精率は年齢が若いほど高く、35歳を過ぎると急激に低下する。そのため女性たちは、後になって使えるように、自分の卵子を凍結しておくのだ。

 サラ・エリザベス・リチャーズ(Sarah Elizabeth Richards)さんは、米生殖医学会(American Society for Reproductive MedicineASRM)が2012年まで実験段階にあるとしてきたこの技術を最初に活用した女性たちの一人だ。

 サラさんは、36~37歳の時に、まず料金が比較的安かったカナダで、そして後にニューヨークで、卵子凍結を計8回行い、70個の卵子を保存した。自身の貯金や両親からの援助でまかなった費用は、総額5万ドル(約570万円)に上る。

「とんでもない費用がかかるけど、いつも子どもが欲しいと思っていた」と語るサラさんは、今も完璧な男性を探し続けている。「『何にお金を使うべきか。家?旅行?それとも家庭を持つチャンス?』と考えた時、答えはとても簡単に思えた」

■卵子凍結で得る安心感

「リスケジュールされた出産:卵子凍結の最前線と、それを利用する女性たち(Motherhood Rescheduled: the New Frontier of Egg Freezing and the Women Who Tried it)」と題した本を執筆したサラさんは、卵子を保存しておくことで「深い安心感」を得たという。

 キャリアを理由に卵子を凍結すべきではないが、仕事と家庭のバランスを取ることがいまだに難しい米国で議論が起きるのは歓迎すべきことだと、サラさんは考えている。「米国では子育てや育児休暇は大きな問題となっているけど、その答えは、出産の先延ばしではありません」