【11月4日 AFP】中国の富裕層の一部の間で今、隕石の収集が流行している。高級スポーツカーやブランド品のバッグ、豪邸などよりも、宇宙からやってきた太陽系のかけらに大枚をはたいているのだ。

 童先平(Tong Xianping)氏(50)も、そんな中国人実業家の1人。1967年にロシアの川底で見つかった数十億年前のものとみられる重さ176キロの石鉄隕石(パラサイト)を、100万元(約1800万円)で購入した。まるで石炭の塊のように見えると認めつつも、「それだけの価値があった。宇宙から届いた『便り』なのだから」と言う。

 翡翠の売買で財を成した童氏は、西部・新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)のウルムチ(Urumqi)に作った自前の展示スペースに何十個もの隕石を保管している。コレクションの中には、やはり約100万元したギベオン隕石や、自ら掘り出した炭素質コンドライトなどもある。

 中国の新富裕層の派手な金遣いは、羨望と嘲笑の的になっている。「会社創業者や社長は、大きな隕石を好む」と童氏。コレクター仲間の1人で、ウルムチ初の地下鉄建設を受注した建設会社社長は明言した。「希少な隕石があれば、金に糸目はつけないよ」

 童氏は、成金と呼ばれるのは構わないが、物欲というものは理解できないと話す。「車は大量生産だ。でも隕石は1つとして同じものがない」

■コレクターと研究者、持ちつ持たれつ

 隕石には、太陽系の起源を解き明かすカギが眠っていると考えられている。地球に生命をもたらしたと信じる科学者もいる。

 砂漠や北極圏で発掘された隕石は、国際市場で取引される。希少な隕石はオークションで数十万ドルの値をつける。古生物学者や考古学者は、自分たちの発掘現場から隕石が持ち出されることを非難するが、隕石の専門家はこうした取引を歓迎している。

「コレクターとは協力関係にある」と、英オープン大学(Open University)のモニカ・グレーディ(Monica Grady)氏(隕石学)は語った。「われわれには自ら発掘・収集する資金がない。代わりに、大勢の隕石商人たちがやってくれる」

 発掘した隕石にどれだけ高い市場価値がつくかは、学者のお墨付きにかかっている。その際、学者たちは自分の研究用に隕石の一部をもらうのだという。