<菅付雅信:新連載「ライフスタイル・フォー・セール」>第十三回:中国のライフスタイル格差を捉える写真家が見つめる消費欲の行方
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■中国のライフスタイル格差を写す写真家
そんな激変する中国人のライフスタイルを白日の下に写し出す写真家がいる。中国の黄慶軍(Huang Qingjun/ホァン・チンジュン)さんは“Family Stuff (家財)”をテーマに、一風変わった集合写真を記録している。人、家、そして家具や家電などの身の回り品すべてを一枚の写真のなかに写しこみ、現在形の中国人の生活様式を表現しているのだ。彼は10年間で様々な地域の37世帯を写真におさめ、エリアによる生活環境の違いを記録している。中国の消費生活を記録し続け、海外での写真展も巡回し、国際的な評価を集めるホァンさんにスカイプでインタビューを試みた。急激な経済発展の濁流に翻弄される中国国民を凝視し続けている彼に、中国の消費主義の行方を語ってもらった。
「私は2006年ぐらいから地域の格差に関心を持つようになったんです。中国には十数億もの人が住んでいるので、個々の家族の違いを見つけるよりも、地域の差を捉えた方が違いがはっきりすることに気づいたんです。家族の生活環境に焦点を当てて撮影し始めたのはそこからですね。家のなかではベッドは寝室、テレビはリビングといったように、家財を違う空間に置いていますよね。でも外に運び出したら、すべて一緒の空間に置けます。そこで一瞬にしてその家族が何を持っているのかを感じることができるし、生活水準もわかるんです。家財が少ないときは、たった2時間くらいで撮影が終わります。例えばモンゴル・ゲル(モンゴルの伝統的なテント)に住む家族は持ちものが少なかったから、撮影も時間がかかりません。一方で家財が多く、運び出しと撮影に10時間ぐらいかかるような家庭もある。今の中国の場合は、撮影時間がかかればかかるほど、その家庭の生活水準は良いということにもなるんです」
中国における格差の二項対立は都市と地方にとどまらない。北京に10年間住んでいるホァンさん自身も、都市の内部で社会階層による格差が生じていることを感じるという。例えば彼の住む地域では、2007年に開催された北京オリンピックを境に経済格差が拡大した。
「貧富の格差の原因は、とにかく土地の値段です。特に大都市の住宅の値段が一気に上がりました。2008年から実感では3倍くらいになったんじゃないかと思います。しかもただ上がるのではなく、急激に変化したことが格差の原因だと思うんです。地価の高騰に対し、収入は何倍も大きくなってないんですから。地方の農民の家の値段はあまり変化がなく、元々の値段も安いんです。でも都市で大きめの家を買うには、今なら一千万元(約1億7000万円 ※10月22日現在1元=17.52円)くらいします。私の実家は黒竜江省(旧・満州)の大慶にあるのですが、そこの年間平均給料は六万元(約100万円)なので、大慶に住む人たちが都市へ移住して家を建てられるわけがないんです」
こうした格差問題について、中国政府も対策を練りはじめている。都市部と農村部の格差を埋めるため、中国政府は2020年までに「都市戸籍」「農村戸籍」という二分化を撤廃させることを目標に掲げた。また、2014年からは「城鎮化」政策という、都市−農村間の格差を是正する政策が始まっている。この政策では中小都市における農民工にも都市戸籍を与え、都市戸籍保有者と同等の社会保険や教育サービスを提供するため「農民工市民化」とも言われている。これにより都市の定住条件も大幅に緩和されるようになり、地方民の生活を改善するための大きな一歩となった。
「この政策は都市の領域を拡大し、多くの人を都市に流入させるための鉄道も整備されたので、都市間の移動時間も短くなったんです。結果、国民のライフスタイルの向上にもつながりました。大手百貨店も全国に展開するようになり、大都市で売られているものと同じ製品が地方でも買えるようになったわけです」
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