【10月31日 AFP】米アップル(Apple)のティム・クック(Tim Cook)最高経営責任者(CEO)が30日、同性愛を公表した。クック氏はこれまでに同性愛を公表しているCEOの中では最も著名な人物となり、企業幹部の中の同性愛者について新たな注目が集まっている。

 クックCEOは米ビジネス誌ブルームバーグ・ビジネスウィーク(Bloomberg Businessweek)に寄稿した手記の中で、「はっきりさせておきたい。私は同性愛者であることを誇りに思っている。神が与えてくれた中でも最高の贈り物の一つだと考えている」と語った。

 米大手企業のCEOで同性愛を公表したのはクック氏が初めて。また、米ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)のビジネススクール、ウォートン・スクール(Wharton School)によると、米経済誌フォーチュン(Fortune)選出の世界トップ企業500のCEOの中で、同性愛を公表している人はいない。

 クックCEOは、自身の性的指向について社内で秘密にしていたことはないとした上で、平等についての公的な声明として同性愛を認めることは自身のプライバシーよりも重要だと表明。今回の公表は、マイノリティー(少数派)のために立ち上がるという個人的な闘いの一環であり、この価値観はアップルが企業として推進するものでもあると語っている。

「同性愛者であることは、マイノリティーの一員であることがどういう意味をもつのかについてのより深い理解と、他のマイノリティー集団の人々が日々直面する課題を垣間見る窓を私に与えてくれた」

「われわれは、自分たちの価値観を守るための闘いを続けていく。この素晴らしい企業のCEOとなる人なら誰でも、自身の人種、性別、性的指向にかかわらず、同じことをするだろう」

 業界に詳しいエンドポイント・テクノロジーズ・アソシエイツ(Endpoint Technologies Associates)のコンサルタントでアナリストのロジャー・ケイ(Roger Kay)氏は、クックCEOの同性愛は業界内では既に知られていたと指摘しつつも、「これにより、同性愛文化がより主流になると思われる。要職に就いている他の人々にカミングアウトを促すきっかけになるはず」と分析している。

 レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(LGBT)など性的少数者のロビー団体「ヒューマン・ライツ・キャンペーン(Human Rights CampaignHRC)」のチャド・グリフィン(Chad Griffin)代表は、「クック氏の発表により、数え切れないほどの命が救われるだろう」と称賛。「世界中の数百万人の人々が刺激を受けることになる。ティム・クック氏は、LGBTの若者が思いつく限りの大きな夢を持つことができる、医者や国会議員、そして世界一のブランドのCEOにだってなれる、ということを証明した」と述べた。(c)AFP/Rob Lever