【10月28日 AFP】欧米諸国では、性行為の体位を描いた異国のバイブルとみられることの多いインドの「カーマ・スートラ(Kama Sutra)」──この「誤解」を説くべく、仏パリ(Paris)の美術館で企画展「THE KAMA-SUTRA」が開催されている。

 パリ市内の「ピナコテーク・ド・パリ(Pinacothèque de Paris)」で2015年1月まで開催されているこの企画展では、4世紀に書かれたとされる経典の他、350点あまりの彫刻や絵画、日用品のも展示されている。「エロティックなだけではなく、官能的で快楽的。音楽やダンスなど、素敵な生活を送るためのあらゆるもの」がテーマになっているという。

 インド人キュレーターのアルカ・パンデ(Alka Pande)氏は、カーマ・スートラが「下品な本でも、(単なる)性行為の体位についての本でもない」ことを来場者に伝えることがこの企画展の目的としており、「人生の本、喜びの本、素敵なライフスタイルや美意識の中のより洗練されたニュアンスをたたえる本として見てほしい」とAFPに語った。

 エロティックな面ばかりが広く知られているカーマ・スートラだが、実際は、ヒンズー教社会で最高位の聖職者階級の一員であるバーツヤーヤナ(Vatsyayana)によって書かれたもので、特に有名なのは7巻のうちの1巻のみだ。

 カーマ・スートラは、ヒンズー教で人生の各ステージを表す「四住期」のうちの一つを対象としたものだ。モラルや倫理を習得し、職業上の成功を収めた者は、カーマ(Kama)あるいは欲望に身を委ねることができるとされるが、それは単に性行為だけではなく、芸術や音楽など人生を楽しませてくれるあらゆるものから喜びを引きだすことによって得られるとされる。

 パンデ氏は、「(カーマ・スートラは)実際には退屈な本ですが、挿絵が加わったりしているうちに、娯楽書籍のようになってしまったのだと思います。性的なものに勝るものはありません」と述べ、「人々は、7巻から成る経典であるということも知らず、逆立ちをした男性が6人の女性と同時に性行為をしているようなことが書かれているくらいにしか思っていないんです」と付け加えた。