■「火星生活」の人間関係をシミュレート

 ビンステッド氏はドーム外から今回の実験を調整している。ドーム内の6人は、科学・宇宙分野に深い関心を持ち高い教育を受けた20~30代の健康な男女だ。「リアリティー番組とは逆に、ドラマの起きないような人たちを選んだ。互いに歩調を合わせ、団結してやっていかれる冷静でおおらかな人たちだ」とビンステッド氏。彼らの共同生活ぶりと、それがミッション遂行にどのように影響するかを調べるのが、今回の実験の目的だ。

 問題は実験の後半に起きる可能性がある。「第3学期症候群」の名で知られる気うつに襲われる時期だ。実験は当初ほど楽しくなくなり、終了までが長い道のりに感じられることだろう。

 クルー同士やドーム外の管制室とのコミュニケーションがうまくいかなくなる問題も起きるだろう。宇宙ミッションではよくあることだとビンステッド氏は言う。「クルーは、自分たちのつらさを管制室が理解せず、多くを求めすぎる上に十分なサポートをしてくれないと感じるようになる。一方、管制室ではクルーが女王様気分になっていると感じ始める。『なんでこっちの指示に従わないんだ』と」

「HI-SEAS」ではまた、クルーの話す声の大きさとクルー同士の話す距離の近さを測定・記録し、各クルーが孤立していないか、クルー間にいさかいが起きていないかを調べる技術の実験も行う。(c)AFP/Kerry SHERIDAN