【10月19日 AFP】米ラスベガス(Las Vegas)が結婚式のメッカだとすれば、「離婚の都」は英ロンドン(London)だ。ロンドンの金融街シティに勤務したり、英国に不動産を所有したりする外国出身の富豪たちが離婚する際、人気があるのが英国の裁判所だ。

 英高等法院(High Court of Justice)は17日、大富豪のマレーシア人夫妻の離婚訴訟を受け付ける決定を下した。夫は資産総額4億ポンド(約685億円)といわれる実業家、クー・カイ・ペン(Khoo Kay Peng)氏。妻は元ミス・マレーシアで、1000足の靴のコレクションを持ち、毎月2万2000ポンド(380万円)のコストがかかるお抱え運転手付きのロールスロイスを乗り回すといわれるポリーン・チャイ(Pauline Chai)夫人。夫妻はロンドン郊外に405ヘクタールの緑地に囲まれた、時価3000万ポンド(約52億円)の邸宅を所有している。

 夫側は、裁判はマレーシアで行うべきだと主張していた。しかし、妻側が雇った「離婚の女神」の異名を持つ弁護士、アイーシャ・バルダグ(Ayesha Vardag)氏率いる弁護団が、長年英国に居住しているチャイ夫人には英国で裁判を受ける権利があると主張し、認められた。

「英国は(離婚訴訟において)女性側にとって魅力的な場所となっている。特に賠償は世界のどこよりも高い。だから、財を成した人物が避けたがるのもここだ」というのは、ロンドンの法律事務所ミシュコン・デ・レヤ(Mishcon de Reya)の家族法部門筆頭弁護士、サンドラ・デービス(Sandra Davis)氏。チャールズ英皇太子(Prince Charles)と離婚した故ダイアナ元英皇太子妃(Princess Diana)や、英ロックバンド、ローリング・ストーンズのミック・ジャガー(Mick Jagger)さんと離婚したモデルのジェリー・ホール(Jerry Hall)さんなどを担当してきた。

 英国の離婚訴訟における慰謝料のこれまでの最高記録は、2011年に離婚した亡命ロシア人の大富豪・故ボリス・ベレゾフスキー(Boris Berezovsky)氏で、2億2000万ポンド(約380億円)。今回のクー・カイ・ペン氏は結婚歴が40年を超えており、ベレゾフスキー氏を上回る慰謝料新記録が見込まれる。