【10月18日 AFP】アフリカ南部諸国の現職政治家たちにとって、過去半世紀は非常に良い時代だった。だがここにきて、根強い貧困や高い失業率を背景に、経済情勢の変革を誓うポピュリズムが台頭し始めている。

 アンゴラやモザンビークなどアフリカ南部10か国のうち8か国では、植民地支配からの独立後やアパルトヘイト撤廃後に選挙で勝利した政党が一貫して政権を掌握している。

 解放運動の成功の陰で、南アフリカの与党・アフリカ民族会議(ANC)やナミビアの南西アフリカ人民機構(SWAPO)などの団体は、共産主義者や自由市場主義者、敵対する部族や派閥を難なく、排除してきた。

 だがここにきて、長く政権の座にある政党の腐敗や汚職が指摘され、国家機関を政府の意志に従わせているなどの批判も高まっている。

 特に、変革を求める都市部の若い層が、大統領や首相、王族に対して非難を声を上げている。若者の失業率は50%に達することも多く、アパルトヘイト時代の富の集中は解消されていない。アフリカの民主主義などについての著書があるダニエル・レスニク(Danielle Resnick)氏によると、こうした不安を背景に「起業家的思考を持つ政治家」が、「現職の政治家に対抗するだけでなく、すべての人に教育や医療の改善、経済成長などあらゆることを約束し」、チャンスをつかんでいるという。

 たとえば南アフリカで「アンファン・テリブル(恐るべき子ども)」とも呼ばれるジュリアス・マレマ(Julius Sello Malema)元ANC青年同盟総裁(33)。マレマ氏はANCから除名処分を受けた後、13年に新党「経済的解放の闘士(Economic Freedom Fighters)」を結成。2014年の総選挙では25議席を獲得し、第3党に躍り出た。

 マレマ氏の政友で、ボツワナの野党を率いるアラファト・キツォ・カーン(Arafat Kitso Khan)氏も国家政策を揺さぶっている。カーン氏は、現政権の私腹を肥やす行為や欧米諸国による「新植民地主義」に屈する外交政策を批判し、「政権交代」を目指している。マレマ氏はカーン氏の応援のためにボツワナ入りを試みたが、ビザが下りなかった。

 10月に国民議会選挙を控えるボツワナのイアン・カーマ(Ian Khama)大統領は、南アフリカでマレマ氏が成し遂げた成功が自国でも起こることは望んでいないし、10月の選挙を前にマレマ氏に波風を立たせてほしくもない。だが、カーマ大統領をはじめとするアフリカ南部の首脳たちはポピュリストの勢力阻止に苦戦しているようだ。

 もっとも、新たに誕生した政党がすぐに政権を掌握すると期待する人はほとんどいないが、ポピュリストたちは、農地改革や資源国有化、黒人経済力強化政策といったアフリカ南部での重要な議論に影響を与えている。実際、南アフリカでは民衆の抗議運動を受けて、ANCが「さらなる転換」を約束。これは、マレマ氏の「ビジネスにおける黒人の権利拡大」の要求を反映したものでもあった。(c)AFP/Andrew BEATTY