【10月16日 AFP】マスクをした男たちの集団による香港(Hong Kong)の民主派デモ襲撃事件は、香港で暗躍する「三合会(Triad)」と呼ばれる犯罪組織への注目を集め、中国政府がこうした組織と協働していると糾弾する声を復活させた。

 完全に民主的な香港行政長官選挙の実施を求めるデモは2週間以上に及んでおり、市内の一部はまひしている。大通りは抗議行動の参加者らがバリケードを築き、占拠している。ここ最近で相次いだデモ隊への襲撃事件によって、民主派活動家の間では、これまで汚れた政治の世界からおおむね遠ざかっていた三合会が、香港の未来をめぐる議論に自ら関与するようになったことを懸念する声が上がっている。

 香港中心部では13日の白昼、武器を持たない平和的なデモの参加者たちに、マスク姿の男たち数十人が襲い掛かり、大勢の報道陣の目前で乱闘を繰り広げた。デモの呼びかけ人らは、金鐘(アドミラルティ、Admiralty)地区で明け方に警察がデモ隊のバリケードを撤去した後に男らが行動を開始したことを指摘。ある民主派議員はAFPに「三合会と思われる連中がデモ隊に到達できるよう、警察がバリケードをどかしたように見える」と語った。

■保安当局は断固否定

 今月に入ってまずマスク集団に襲われたのは、三合会の勢力範囲として知られる労働者階級地区、旺角(モンコック、Mongkok)の民主派デモ拠点だった。警察によれば、逮捕された男8人は三合会との関連が疑われている。この襲撃の後、警察と香港自治区行政府は、犯罪組織と結託しているのではないかとの疑念の払拭を余儀なくされた。香港保安局の黎棟國(Lai Tung-kwok)局長はこの疑惑について「でっち上げで、行き過ぎ」だと怒りをあらわにし、警察も犯罪組織との共謀を否定した。

 しかし、意図的かどうかにかかわらず、暴行集団は衝突の際、政府側についていたという目撃証言が出ている。民主派の香港立法会(議会)議員、何俊仁(Albert Ho)氏は13日の衝突の後、「行政府は、実力行使を下請け的に委託していないまでも、暴徒らをするがままにさせているように見える。これは中国本土の共産党がよく用いる戦術の一つだ。政府が責任をとらなくて良いように、三合会や政府寄りの暴徒を使って市民を襲わせる手法だ」と語った。

 一方、香港大学(Hong Kong University)の組織犯罪専門家、王鵬(Wang Peng)氏は「香港にしても本土にしても、政府が三合会を警官として雇えば、自分たちの正統性を破壊することになる」として、当局が犯罪組織に積極的に関与しているとの主張に疑問符を投げかけている。