【10月9日 AFP】シリアの町ダビク(Dabiq)で、80の軍旗を掲げた背教徒の軍勢がイスラムの軍勢と終末論的な戦いを繰り広げる。イスラム教徒たちは殺りくされるが、最後には勝利し、終末の到来を告げる。

 この太古のイスラム教スンニ派(Sunni)の預言──預言者ムハンマド(Mohammed)の言行録で言及されている──はイラクとシリアで活動するスンニ派の過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」の「イスラム聖戦士」たちのスローガンとなってきた。8月にダビクを掌握して以降は、その声がさらに高まっている。

 ダビクは、イスラム国が掌握するシリアのラッカ(Raqa)やイラクのモスル(Mosul)と比べると軍事的価値はほとんどない。しかし、イスラム国の戦闘員たちが米国の主導する空爆を受けるなか、ダビクの象徴的価値の重要性が明確になってきた。

「(ダビクは)士気を高める」と、米シンクタンク、ブルッキングス研究所(Brookings Institution)のシャディ・ハミド(Shadi Hamid)氏は語る。さらに同氏は、「(イスラム国の)戦闘員の圧倒的多数がこういった話を信じていると推測してもよいだろう」と述べた。

 ソーシャルメディア上のイスラム国支持者の間でダビクは西欧との戦いの代名詞となり、イスラム聖戦士を爆撃する米国とその同盟国は現代の「十字軍(Crusaders)」として描かれている。イスラム国は公式雑誌の名称すら「ダビク」と名付けた。

「イスラムのライオンはダビクにカリフ(預言者ムハンマドの後継者)の旗を掲げた」とチュニジアのあるイスラム国支持者はマイクロブログのツイッター(Twitter)で最近、つぶやいた。「今、彼らは十字軍の到来を待っている」

 ダビクの預言はいくつかのバージョンで語り継がれているが、どのバージョンでも、イスラムの軍勢と背教徒の軍勢の戦いが語られている。この数週間、イスラム国の支持者たちは、この預言が真実であることを示しているとして、さまざまな出来事を関連づけてきた。

 米軍が主導する有志連合への参加国数──現在すでに60国以上──が、預言されている「80の軍旗」に達するのを注視している人もいる。また、米軍のマーチン・デンプシー(Martin Dempsey)統合参謀本部議長が地上軍の投入の可能性を示唆したことが、預言されていた戦いの兆候だと信じている人もいる。