【10月9日 AFP】米政府が行っているオンライン通信傍受活動は深刻な脅威であり「インターネットを壊す」可能性があると、米グーグル(Google)のエリック・シュミット(Eric Schmidt)会長が8日、懸念を示した。

 米シリコンバレー(Silicon Valley)で米上院財政委員会(Senate finance committee)のロン・ワイデン(Ron Wyden)委員長が中心となって開いた公開討論会での発言で、シュミット会長の懸念には米SNS大手フェイスブック(Facebook)や米マイクロソフト(Microsoft)、米オンラインストレージサービスのドロップボックス(Dropbox)など参加各企業も同調を示した。

 パネルディスカッションの議題は、米政府の監視スキャンダルがもたらした経済面や規制面の反動について。米政府の監視活動は、米IT企業の信頼を損ない、オンライン通信上のプライバシーを保護する意志や能力が欠けているのではないかとの疑念を生んだ。

 シュミット会長はパネルディスカッションの中で「影響は深刻で、さらに悪化している」とコメント。「最も単純な帰結は、われわれがインターネットを壊してしまうというものだ」と述べた。

 パネリストらは、各国政府がネット上のデータの自由な移動を阻止する障壁を設置すれば、世界中の人々に共有や協力の可能性を提供し経済の推進力にもなってきたインターネットの環境を実質的に破壊することになると主張した。

 パネリストらによれば、脅威は既に出現している。各国政府はオンライン上のデータやサービスを米国のサーバーにではなく、自国内に置くようIT企業に求めているが、これは規制を装った貿易障壁だというのだ。このような「データの現地化」への圧力には、デジタルデータを米企業に渡さずに自国企業に保管させる法律もあり、米IT企業が信頼するネットの効率性を損なうことになるという。

「データセンターとデータ自体を地域内に置かなければならないという考え方は、インターネットの構築のされ方と根本的に対立する」とフェイスブックのコリン・ストレッチ(Colin Stretch)法務顧問は語った。

 パネリストらは、米規制当局にオンライン「盗聴」行為を抑制して国際社会の信頼回復に努めるよう呼び掛ける一方、自社サービスやネットワークにおいてセキュリティーや暗号技術を強化し、各企業が自力で問題に対処する方針を支持した。

「法の改善がないため、われわれは技術の改善に努めざるを得なくなっている。もしも政府当局者が暗号化を懸念しているのなら、彼らは法律を改善する努力をしなければならない」と、マイクロソフトのブラッド・スミス(Brad Smith)法務顧問は語った。(c)AFP/Glenn CHAPMAN