【10月8日 AFP】英陸上男子中距離の往年の名選手で、国際陸上競技連盟(International Association of Athletics FederationsIAAF)の副会長も務めるセバスチャン・コー(Sebastian Coe)氏が7日、2度の薬物違反を犯しているジャスティン・ガトリン(Justin Gatlin)が年間最優秀選手の候補に選出されたことについて、自身も心穏やかではないと認めた。

 ガトリンは2006年に、テストステロンの陽性反応が出るという2度目の薬物違反を犯し、6年間の出場禁止処分を科されたが、その後4年に短縮された。そのガトリンの候補選出については、すでにドイツの円盤投げ選手であるロバート・ハルティング(Robert Harting)が、自ら候補を辞退するという形で抗議を行っている。

 2004年アテネ五輪の男子100メートル金メダリストで、2005年には世界選手権で短距離2冠を達成したガトリンは、32歳という年齢を感じさせない驚異のシーズンを過ごし、100メートルで今季世界最高を3度記録すると、100メートルと200メートルの両方で、30代選手の史上最速タイムを出している。

 しかし、英国五輪協会(British Olympic AssociationBOA)で会長を務めるコー氏は、ガトリンの候補選出を快く思っていない。コー氏はまた、ステロイドやそのほかのパフォーマンス向上薬摂取の副作用は10年続く場合もあるとするオスロ大学(University of Oslo)の調査について、分かりきった結論だと話している。

 1980年のモスクワ五輪と84年のロサンゼルス五輪で1500メートルの金メダルを獲得した58歳のコー氏は、「ただ一つ私に言えるのは、彼には選ばれる資格があるということだ」と話した。

「いたって心穏やかというわけにはいかない。私がここに座ってそのことを楽観していたら、みなさんもひどく驚いたはずだ。個人的には大きな葛藤がある」

「それに、私はずっと以前からアナボリック・ステロイドをはじめ、パフォーマンス向上薬と筋肉増強剤には長期にわたる副作用があると確信してきた」

「オスロ大学の調査を軽んじるつもりはないが、過去20年間で私が知り合ってきた人物、特にスポーツ生理学と生化学を専門とする人間であれば、誰だってそんなことは承知していると言うはずだ」

 この日、ロンドン(London)でスポーツの安全をテーマにした会議「セキュアリング・スポーツ(Securing Sport)」に参加したコー氏は、「効果がすぐに消えないのは周知の事実で、それが時として、選手のパフォーマンスにも表れるのを、われわれは目撃してきたはずだ」と話した。

 2012年のロンドン五輪で大会を成功へ導いたコー氏は、IAAFで長らく会長を務めたセネガルのラミーヌ・ディアック(Lamine Diack)氏が、2015年に退任する予定となっているため、後を継ぐ意欲を見せている。

「私はいつだって明快だ。このスポーツの未来を作るチャンスが訪れたら、もちろんそれに飛びつく。会長選が行われるのであれば、立候補したい」

(c)AFP