【10月5日 AFP】胸に抱くのは愛する家族の写真、食べ物がたくさん入った袋、そして希望――リベリアの首都モンロビア(Monrovia)に設けられたエボラ出血熱治療センターの前には、患者の身内が40人ほど集まり、何日も待機している。だが、中にいる家族の安否は知らされないままだ。

 その中の1人、ジョージ・ウィリアムズさんは、妻と娘を9月23日にセンターへ連れてきた。「それきり、家族については何も知らせがない。会うこともできていない」が、それでも「医者と政府を信じている」と話す。

 宇宙人めいた白い防護服に身を包んだ守衛が治療センターの門を開くと、口々に不満を訴えていた家族たちがぴたりと押し黙った。門の中から十数人分の遺体袋をのせた赤十字のトラックが2台現れる。1人の女性が泣き叫び、さらに2人が続いて声を上げた。怒りが再びその場を支配した。

「息子に会いたい!でも、あの子はもう死んでしまったのかもしれない」。12歳のわが子を21日に診療所へ連れてきたジャンジェイ・ゲレプレイさんは言った。市内の自宅周辺ではエボラ出血熱の感染者が相次いでいるという。涙は、もう枯れてしまった。「当局は何の情報もくれず、ただ待てと言う。毎日ここに来ている」

 アイランド診療所と名付けられたこの治療センターは21日に開設されたが、わずか1日で120床のベッドは全て埋まった。運営する世界保健機関(WHO)によれば、開設後5日で患者数は200人を超えたという。

 リベリア国内でNGOが運営する他のエボラ治療センター同様、アイランド診療所でも設備や物資が不足し、増える一方の患者に対応しきれていない。おまけに、14年続いた内戦で荒廃した公共医療機関の役割も担わざるを得ない状況だ。

「本来ならば、患者と家族が数メートル距離を置いた状態で話せる環境を整えるべきなのだが、当分は実現しそうにない」と、診療所のWHOスタッフは明らかに当惑した様子で話した。

 西アフリカで大流行しているエボラ出血熱では、リベリアの被害が最大で、10月1日のWHO発表によるとこれまでに2069人が死亡した。感染者数は4000人近くに上っている。