■「地獄」の売春生活

 雇用や職場で差別されるトランスジェンダーは、多くが性産業の仕事に就くようになり、性感染症のリスクにさらされている。アビナヤ・ジャヤラマン(Abinaya Jayaraman)さんは銀行で働いていたが、雇用主から男性の格好をして男性用トイレを使えと言われ、退職して売春婦となった。生きるために、1回30リンギット(約1000円)で客の相手をしていたという。「地獄だった」と彼女は振り返る。

 アビナヤさんは2011年に性別適合手術を受け、トランスジェンダーを支援するNGOで安定した仕事も得た。それでも心の傷は残っている。子どもの頃に親戚の一人から性的暴行を受けた過去を持ち、自身のライフスタイルをめぐり家族とも疎遠な状態が続いている。

 多くのトランスジェンダーがうつ病になったり、自殺したり、ドラッグやアルコールに溺れるようになる。「私たちは恐怖のなかで生きている。ここでは犯罪者のように扱われ、人間としては見てもらえない」と、アビナヤさんは語った。(c)AFP/Julia ZAPPEI