仏パスツール研究所(Pasteur Institute)のウイルス学者、ノエル・トルド(Noel Tordo)氏は、エボラ出血熱が治った人の血清には、エボラウイルスを無力化する抗体はそれほど多くは含まれていないといういくつかの研究があると指摘する。「狂犬病の場合は、ヒトあるいは動物の体内にある抗体の大半はウイルスを無力化するが、エボラの場合はよく分かっていない。エボラウイルスを無力化する抗体が全くないとは限らないが、それほど多くはない」

 エボラ出血熱が治った人の血液を輸血するという治療法は、西アフリカで使える簡単で低コストの対応策のように思える。現に、今月行われたWHOの会議では、参加した約200人の専門家が、血液療法と回復期の血清療法はすぐに利用できるという考えで一致した。

 しかし、仏パリ(Paris)のピティエ・サルペトリエール病院(Pitie Salpetriere Hospital)で感染・熱帯病部長を務めたフランソワ・ブリケール(Francois Bricaire)氏は実際にはリスクもあると言う。

「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)や肝炎ウイルスを広げないよう、まず血清が安全であることを確認しなければならない。そのための技術は先進国では一般的だがアフリカで実践するのは難しい。病気の流行の真っただ中では、あらゆることをチェックすることは主な関心事にはならない」

 上述のクラウスナー氏も、適切な手段がなければ治療を受けた患者がエイズや梅毒にかかったり、輸血の副作用が出たりする恐れがあると指摘している。(c)AFP/Kerry SHERIDAN