【9月12日 AFP】捕らえた魚をため込むペリカンの「のど袋」のような構造を顎に持っていたとみられる翼竜の化石を、中国で発見したとの研究論文が、11日に英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」で発表された。

 この奇妙な生物は、ジェームズ・キャメロン(James Cameron)監督のSF映画『アバター(Avatar)』に登場する翼竜に似た飛行生物「イクラン」と、ラテン語で「竜」を意味する「ドラコ」から「イクランドラコ・アバタル(Ikrandraco avatar)」と命名された。

 イクランドラコの不完全な標本2体は、中国東北部の九仏堂累層(Jiufotang Formation)の互いに近い場所から見つかった。この地層には、約1億2000万年前の白亜紀初期に生息していた多種多様な生き物の化石が眠っている。

 イクランドラコの頭蓋骨は、非常に平らで細長い形状をしており、下顎の先端下部には特徴的な板状の突起部がある。

 中国科学院(Chinese Academy of Sciences)の王小林(Xiaolin Wang)氏とブラジル国立博物館(National Museum)のアレクサンダー・ケルナー(Alexander Kellner)氏率いる研究チームは、フック状の付属肢があるこの突起部から、伸縮可能なのど袋がぶら下がっていたと推測している。

 翼竜がこのような特徴を持つという仮説は、一部の化石標本でみられる柔らかな皮膚のひだの痕跡に基づき提唱されていたが、これまでその確証は得られていなかった。今日では、ペリカンがこのようなのど袋をもつことがよく知られている。

「われわれは次のような仮説を立てた。この翼竜は付近の湖の水面上を低空飛行しながら水中に下顎を降ろすことで、魚を捕らえていた」と論文は述べている。

 翼竜ののど袋の役割については、獲物を入れておくことでそのまま狩りを続けられるようにすることや、獲物と一緒にすくい上げた水を吐き出す助けになることなどが考えられる。

 恐竜の近縁種である翼竜は、約2億2500万年前~6500万年前の時代に生息していた。これまでに100種以上が発見されており、中には翼の幅が13メートルに及ぶ巨大なものもいる。(c)AFP