【9月11日 AFP】かつて14世紀のメキシコで栄えたアステカ王国の人々から「水の怪獣」と呼ばれていたメキシコサラマンダー(通称ウーパールーパー)が現在、絶滅の危機にある。器官を再生する能力を持つことから医学研究の対象となってきたメキシコサラマンダーの危機に、研究者らも警鐘を鳴らしており、メキシコ市(Mexico City)では運河に残ったサラマンダーたちの保護活動が行われている。

 乳白色や黒、オリーブグリーンなど多様な色種があるメキシコサラマンダーは、現在のメキシコ市にあった古代湖に生息していた。そうした湖の大半は、やがて枯れてしまったが、メキシコサラマンダーは市内のソチミルコ(Xochimilco)にある運河で生き延びてきた。しかし、人口2000万の大都市の重みがのしかかり、メキシコサラマンダーは絶滅の危機を迎えている。

 これまでの研究でメキシコサラマンダーには、がんへの抵抗力があるうえ複雑な脳細胞の再生能力があることが分かっている。そのため、研究者たちは人での再生医療に役立てようとメキシコサラマンダーの体細胞を調べ、器官や体の一部を再生するメカニズムの解明に努めてきた。

 メキシコサラマンダーのメスは1回に1500個もの卵を年に4回、産卵する。だがメキシコ国立自治大学(UNAM)の研究によると、1996年には1平方キロあたり1000匹も生息していたメキシコサラマンダーは現在、同面積あたり0.3匹まで激減している。こうした現状をうけ、メキシコ国立自治大学は今、英ケント大学(University of Kent)の助力を得てメキシコサラマンダーの保護に力を注ぐ。

 その一環で研究者らは、有害な農薬を使ったりメキシコ市南部の運河近くには外来植物を植えたりしないよう地元の農家を説得し、見返りとして農作物を「エコ・フレンドリー」と認証する活動を行っている。(c)AFP/Yemeli ORTEGA