■オゾン層問題への取り組みを気候変動問題に生かす

 またシュタイナー事務局長は「だが、われわれが直面している課題はいまだに非常に大きい。モントリオール議定書の成功は、オゾン層の保護と回復だけでなく、気候に対するさらなる活動の後押しとなるはずだ」と述べた。

 オゾン層が薄くなる「オゾンホール」現象は、高高度域が極度の低温になることで起きるが、それ以外にエアコンや冷蔵庫の冷却剤、断熱材の発泡体、整髪スプレーの高圧ガスなどの人為的な塩素化合物が原因で発生する。

 人為的な塩素化合物の大半、主としてクロロフルオロカーボン(CFC)類やハロン類は、国連の全加盟国に承認されたモントリオール議定書の下で、段階的廃止に向けた措置が予定通りに進められている。

 科学者ら300人がまとめた110ページからなる今回の報告書は、オゾン層に関しては全般的に良い知らせととしつつも、潜在的な落とし穴についても警告を発している。

 オゾン層を侵食している化合物として、報告書が指摘している「四塩化炭素」は、モントリオール議定書で廃止の対象となっているにもかかわらず、生産量が増加し続けている。報告書によると、四塩化炭素の大気中濃度の測定値は、過去10年間に各国より報告された生産量と使用量の統計値を「はるかに上回っている」という。

 また、報告書が指摘している人為的化合物の「亜酸化窒素(N2O)」は、オゾン層を破壊する一酸化窒素(NO)の前駆物質だが、同議定書による廃止の対象にはなっていない。

 N2Oの排出は主に土壌のバクテリアの活動に起因するが、約3分の1は、化学肥料、化石燃料、家畜糞、工業生産などの人的な活動に由来するものだ。

 CFC類の大気中濃度が減少傾向にある中、N2O排出への対処は「ますます重要になる」と報告書は指摘している。