【9月9日 AFP】米保健当局は8日、米国のおよそ12州で重い呼吸器疾患の群発が報告されており、子どもにだけ感染する珍しいウイルスの拡大の懸念が高まっていると発表した。

 米厚生省のアン・シュチャット(Anne Schuchat)医務総監補によると、報告されたうち大半の症例で、エンテロウイルス68型(EV-D68)が原因と特定された。このウイルスは軽度~重度の呼吸器疾患をもたらすことが知られているが、どのような症状が出るのか完全には分かっていないという。

 シュチャット氏はこれまでに「およそ12州」が似た症例の群発を米疾病対策センター(Centers for Disease Control and PreventionCDC)に報告しており、「事態は急激に進行している。もっと多くの患者がいたとしても私は驚かない」と話している。

 今年に入ってから死亡例の報告はないが、乳幼児から10代までの子どもが最も感染リスクが高く、一部の州では入院する患者も急増したという。

 米メディアによると、発生地域にはコロラド(Colorado)、ジョージア(Georgia)、イリノイ(Illinois)、アイオワ(Iowa)、カンザス(Kansas)、ケンタッキー(Kentucky)、ミズーリ(Missouri)、ノースカロライナ(North Carolina)、オハイオ(Ohio)、オクラホマ(Oklahoma)の10州が含まれる。

 シュチャット氏は記者らに対し、エンテロウイルス68型は1962年に発見されたもので新種のウイルスではないが、「非常にまれなウイルスで、他のエンテロウイルスと比べて解明が進んでいない」と説明した。同氏によると、同型ウイルスの群発は近年、日本とフィリピンでも確認されているという。

 今年初めには、ポリオに似た症状が出た子どもたちからエンテロウイルス68型が検出されたと報じられていたが、シュチャット氏によると、今夏に確認された患者には神経性の症状はみられていない。

 エンテロウイルス68型はせきやくしゃみ、またはウイルスが付着した表面への接触によって人から人へと感染する。現在このウイルスが発生・拡大している理由は分かっていない。予防用のワクチンは存在せず、手洗いと衛生管理の徹底が感染拡大を防ぐ唯一の方法とされている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN