■帰国者によるテロは「時間の問題」

 ネムシュ容疑者についてのエナン氏の発言は即座に、欧州全体に警鐘を鳴らした。テロリズム専門家のジャンシャルル・ブリサール(Jean-Charles Brisard)氏はベルギーのユダヤ博物館銃撃について、「シリアの(武装勢力)ネットワークに関連するものとして、欧州本土で初めて成功したテロ行為だ」と指摘している。

 アルジェリア系フランス人のネムシュ容疑者のように、戦闘慣れしてテロの種をまき混乱を起こす能力を身につけた後に欧州に戻る人物は数百人に上る。「大規模な現象として、ますます傾向が強まっている」というのは、98~04年にかけて仏情報機関のテロ対策部を率いたルイ・カプリオリ(Louis Caprioli)氏だ。

 デービッド・キャメロン(David Cameron)英首相は、「ジハード(聖戦)」に加わるためにこれまでに少なくとも500人が英国からシリアやイラクへ渡り、うち約250人が英国へ戻っているとしている。一方フランスでは、シリアでの戦闘に加わったり、シリア入りの準備をしていたりする人が約950人に上るとみられている。

 テロリズム専門家のブリサール氏は、イラクやシリアでの戦闘経験がある、または現在戦闘に加わっている欧州人は約3200人いると推計しており、欧州がいつ新たな攻撃に晒されてもおかしくないと危惧している。

 ブリサール氏は「(帰国者によるテロ事件発生は)すでに時間の問題だということを、各国の情報機関は認識している」と指摘。また米テロ専門家のマシュー・オールセン(Matthew Olsen)氏も同様の見方を示し、欧州が脅威に晒されるのは「比較的すぐ」だろうと語っている。(c)AFP/Mathieu RABECHAULT, Anne LE COZ