【8月31日 AFP】9歳の時、ミハル(Michal Trzajna)さんは兄にけしかけられて3階のバルコニーから飛び降り、両脚を骨折した。あれから13年が過ぎ、ミカルさんは22歳になったが、どうして自分が高さ200メートルの断崖からロープ1本だけを頼りに飛び降りたい衝動に駆り立てられるのかは、今も説明できずにいる。

「以前は飛行場のそばに住んでいて、飛行機から飛び降りることを夢見ていたよ」と、ミハルさんはAFPの取材に答えた。「空中で体を思い通りにコントロールできたとき、その感覚はとにかく独特なんだ」

 ミハルさんは、はるばるポーランドからギリシャでも最高のレジャースポットであるザキントス島(Zakynthos)にやってきたグループの1人だ。だが、海岸で寝そべるためではない。

 その目的は、エクストリームスポーツの1つ、ロープジャンピングだ。ダイビングとロッククライミングを掛け合わせたようなスポーツで、ちょっとした工学の素養も要求される。

「ジャンプしながら、空中での体のコントロール方法を覚えるの。泳ぎを覚えたりするのと同じね。自由落下に慣れるのよ」と、スペインから参加したマルタ(Marta Jamenes)さんは語った。

 原理はバンジージャンプと似ているが、岩壁からジャンパーの背中の装着ベルトまで十字に伸びるロープの組み合せが、ずっと精巧になっている。

「バンジージャンプより優れているのは、ジャンプの80%が自由落下だという点だね」とミハルさん。「(バンジージャンプで使う)弾性ロープだと、自由落下はジャンプする高さの35~40%まで制限されてしまうんだ」

「ロープはバンジージャンプみたいに飛び降り台につけるのではなく、崖に水平に張られた別のロープにつけるんだよ」と、ミハルさんの連れで元救急隊員のルカス(Lukas Michul)さんが説明した。

「初めての場所でジャンプすると、心臓はすごくドキドキするし、足は震えるし、もうアドレナリン全開になる。それから、ジャンプを重ねるうちにだんだん楽しくなってくるんだ」

 肝心なのは、正確さ。ロープをピンと張っておくための重量と高さの計算は、ミリ単位までの精密さが求められる。自分の体重だけでなく、手足や風を利用することも想定する。

 きちんと準備すれば危険はないと、ジャンパーたちは口をそろえる。装置の設置には10日かかるが、山岳地帯でも断崖でも高層ビル街でも同じように使えるという。

 ロープジャンピングを行うグループは世界でもまだ少ないが、ルカスさんによればロシア、ウクライナ、スペイン、リトアニア、フランスにもいるという。

 その名も「ドリームジャンプ(Dreamjump)」というポーランドのグループは今年、既に南仏ベルドン渓谷(Verdon Gorge)とノルウェーのシェラーグ(Kjerag)山でジャンプをした。今後は、クロアチアの洞窟地帯、フランスの高架橋、米ラスベガス(Las Vegas)と南アフリカ・ヨハネスブルク(Johannesburg)の超高層ビル、そして米グランドキャニオン国立公園(Grand Canyon National Park)でのジャンプを計画している。(c)AFP/Sophie MAKRIS