■完治患者が「エボラ」理解のきっかけに

 西アフリカでは、4か国でこれまでに2100人以上がエボラウイルスに感染し、うち1145人が死亡した。シエラレオネ国内の感染は810件で、4か国中最多だ。中でも、隣国リベリアとの交易の要であるカイラフンと、隣接するダイヤモンド交易の中心地ケネマ(Kenema)は感染例が特に多く、封鎖されている。

 約100万人の住民が事実上閉じ込められている2地区内では、地元の医師たちが病気だけでなく、近代的な医療に対する人々の恐怖とも闘っている。多くの地元民はエボラ出血熱の予防法も治療法も知らない。病気の存在を認めない人も少なくない。

 こうした地域に帰還するハワさんたち元患者たちを、MSFはチームで支援している。支援チームで保健衛生促進を担当するエラ・ワトソンストライカー(Ella Watson-Stryker)さん(34)は、ハワさんの親族や近隣住民を集めて説明会を開く予定だ。住民たちの疑問に答え、ハワさんが帰宅しても何の危険もないことを理解し安心してもらうためだ。

「感染拡大への対策としても、非常に効果がある。回復した元患者が帰宅して治療施設での体験を話せば、感染しても治る希望があることを人々に知ってもらえる。地域社会とMSFとの信頼醸成にもつながる」

 ワトソンストライカーさんによれば、元患者が地元に帰って初めて、人々はエボラ出血熱の治療施設が「死ぬのを待つだけの場所」ではないことを理解し始めるのだそうだ。患者たちが食事を与えられ、ソフトドリンクは飲み放題で、シャワーやトイレも完備した施設で治療してもらえる上、家族たちも見舞いに来ていいと知ると、人々は驚くという。

「MSFの治療施設については、収容されたら死ぬまで放置されるだけだなどという噂が広まっている。私たちは、地域社会に根深いそうした恐怖感を緩和しようと努力しています」と、ワトソンストライカーさんは話した。(c)AFP/Frankie TAGGART