【8月14日 AFP】11日に急死した米俳優ロビン・ウィリアムズ(Robin Williams)さんは、テレビ・映画で披露した弁舌巧みで愉快な演技が何よりも印象深いが、実はハリウッド俳優としてアニメ声優に挑戦した先駆者だということはあまり知られていない。

 ウィリアムズさんは1992年に米娯楽・メディア大手ウォルト・ディズニー(Walt Disney)が制作した大ヒットアニメ『アラジン(Aladdin)』に、ランプの魔人ジーニー(Genie)役で出演。ハリウッド・スターがアニメ映画の声優に挑戦するトレンドを、ほぼ単独で作り上げた。

 ウィリアムズさん演じる魔人は生き生きとして、主役顔負けの強烈な印象を残した。得意の即興の演技を随所で自由に披露したウィリアムズさんは、あらゆる点で「はまり役」だった。

 名作童話をアニメ化した『アラジン』は、映画スターが声を演じることで話題を呼ぶという、今日では当たり前となったマーケティング手法を初めて取り入れたアニメ作品とされている。スター俳優として前代未聞のウィリアムズさんの挑戦から20年余り、ハリウッドでは数多くのハリウッドスターたちが続々とアニメ映画に出演するようになった。

『アラジン』はもう1つの点でも革新的で重要な作品だと、アニメ史家でウェブサイト「カートゥーン・リサーチ(Cartoon Research)」の編集長も務めるジェリー・ベック(Jerry Beck)氏は指摘する。

 それは、ディズニーがウィリアムズさんに即興で芝居する裁量を与え、同社のアニメ表現にアドリブを取り入れたという点だ。「今日まで続く1つの潮流が、まさにそのとき始まった」とベック氏は言う。「俳優に声優として出演を依頼する際、自由に演技してよいとする傾向は、ウィリアムズさんから始まったことだ」

 ウィリアムズさんは、90分の映画のために、およそ16時間分にも上る即興の演技を撮影していたという。

 生涯に何十作もの映画に出演したウィリアムズさんは後年、ジーニー役について、キャリアで三本指に入るお気に入りだと述べている。

 ベック氏は、ウィリアムズさんをこう評する。「ロビン・ウィリアムズという人物そのものが、生きたアニメのような存在だった。実に数多くの役柄を担い、さまざまな個性を声で表現することができた。だからこそ、アニメにおいて彼は完璧だったのだ」(c)AFP/Fabienne FAUR