【8月7日 AFP】オーストラリア北部を訪れていた観光客たちは、2頭の凶暴な動物が戦う様を目撃し、がくぜんとした──巨大なイリエワニ(別名:海水ワニ)がメジロザメにかみつき、格闘していたのだ。

 アンドリュー・ペースさんは5日、パートナーと7歳の娘とともに、北部特別地域(Northern Territory)のアデレード川(Adelaide River)で野生動物などを観察するクルーズツアーに参加していた。

 一行は数頭のワニが水面から飛び上がり、棒に取り付けたバッファローの肉片にかぶりつく様子などを眺めていたという。その中にはブルータス(Brutus)と名付けられた全長5.5メートルのワニもいた。

「それは、桟橋まで帰る途中に起きた。私たちはブルータスの前をもう一度通ったんだ。ブルータスは土手に上がっていたよ」とペースさんはAFPの取材に語った。

「ブルータスを通り過ぎるとき、ヒレが見えた。ガイドがボートを近づけてみたら、なんとそれはサメだったんだ」

 推定年齢80歳ほどとされるブルータスは、片方の前足と歯の大半を失っている。同地域では有名なワニで、北部特別地域ニュース(Northern Territory News)はこの戦いを「ジョーズ対クローズ(爪)」と名付けた。

 ブルータスは近場に生息するサメの一匹に前足を奪われたとされており、ブルータスは絶好の復讐の機会と考えたのではないかというのがもっぱらのうわさだ。

 ペースさんの娘は「畏敬の念」に打ちひしがれたという。「滞在歴30年のガイドも、初めて見たと興奮していた」とペースさんは語った。

 北部特別地域ニュースによると、この壮大な戦いの勝者はブルータスだった。だがペースさんは確証が持てないと語る。

「一回そこを通過したとき、ワニはサメをほおばっていた。だがボートを近づけるとワニは川に滑り込んだ。ワニが水中に入ったとき、サメはのたうち回り始めた」

「つまりサメはまだ生きていたんだ。血もどこにも見当たらなかった」とペースさんは述べ、ブルータスには歯が数本しか残ってないことを指摘した。

「サメはもしかしたら逃げ去ったかもしれない。もしかしたら食べられたのかもしれない。われわれには分からなかった。残念ながらブルータスはそれを私たちには見せてくれなかった」。(c)AFP