【8月7日 AFP】定年が少しずつ近づくなか、息子への仕送りやベビーシッターの仕事で忙しく、自分の老後について心配する余裕もないと語るHe Xiangyingさん(51歳)──体が動くうちは働き続け、その後は故郷に戻って節約生活をすると話すHeさんは、仕事に就いていない息子の世話になることなど少しも考えてもいないという。

 Heさんは北京(Beijing)の公園で、「自身の生活もままならない状況で、年老いた親の面倒なんて誰がみるだろうか。私は自分の世話は自分でする」と目に涙をためながら話した。

 中国の高齢者人口は急速に増加しており、子どもは親の介護に追われている。介護士の助けを借りる金銭的余裕がないだけでなく、介護業界の人手不足の問題もある。

 中国では、2030年までに60歳以上の人口が全人口の4分の1にあたる3億5000万人と、その数は現在の約2倍に膨れ上がるとみられている。一人っ子政策で進んだ高齢化の影響により国の労働力は縮小し、複数の祖父母の面倒を孫1人でみるケースも予想されている。

 これに追い打ちを掛けているが、今の若い世代を苦しめている、高騰する住宅価格と低迷する経済だ。

 親の老後の面倒は子どもがみるという同国の伝統は、現代社会の中で薄れつつある。しかし、中国の介護システムはまだまだ試験的な段階にあり、李立国(LI Liguo)民政相によると、高齢者1000人に対して用意されている介護ベッドの数はわずか25個程度だという。

 北京市郊外には3つ星ホテルを改築したベッド数300の介護施設がある。2年前に入居したZhou Chuanxunさんは「自宅にいたらとてもさみしかったと思う。ここにいれば少なくとも他の人と話すことができる。ここの方がいい。時間の流れも早い」と話す。Zhouさんの娘と息子は2人ともいい仕事に就いているが、多忙のため親の面倒を見る余裕がないのだという。

 施設経営者によると、入居費用は月額8000元(約13万円)。これは大半の家計を大幅に上回る金額だ。

 若年労働者の間では、高齢者の入浴や食事の介助は魅力的でないという考えが根強く、これが介護市場の人材確保における問題にもなっている。施設に入居できる高齢者は全体のわずか3%の見込みだという。(c)AFP/Carol HUANG