【8月4日 AFP】空港の祈とう室や国産の絹で作られたヒジャブ(頭髪を覆うスカーフ)、さらにはハラール認証を受けた食品――。国民の均質性が高く、イスラム教信者の数がわずか10万人前後の日本で、2020年までに外国人観光客を倍増させるという目標を達成するため、なじみの薄いイスラム教徒の旅行客を取り込む試みが始まっている。

 東京で開催された最近の「ハラール・ツーリズム」のセミナーで、マレーシアの食品会社「ブラヒム(Brahim's)」のトップ、ダトゥク・イブラヒム・ハジ・アフマド・バダウィ(Datuk Ibrahim Haji Ahmad Badawi)氏はAFPに対し、「イスラム教徒の旅行者にとって、日本はまだ快適な旅行先とはいえない。(日本)政府もこれに気付いたようだ」と述べた。

 同様のセミナーは昨年、国内20か所で催され、日本を訪れるイスラム教徒にどのように向き合うべきかを学ぶため、ホテルやレストランの経営者たちが招待された。

 また大阪商工会議所は、イスラム教で禁忌とされるアルコール飲料や豚肉など、イスラム教徒が口にして良いものと悪いものを例示した5000部のガイドブックを配布した。

 2013年に日本のビザ取得要件が緩和されたマレーシアやタイ、そしてまもなく緩和予定のインドネシアなどのイスラム教徒が数多く暮らす東南アジア諸国では、日本への観光旅行が盛んに宣伝されている。

 2013年に日本を訪れたインドネシア人観光客の数は前年に比べて37%増え、マレーシア人観光客も21%増となった。

 ブラヒム社はハラール食を取り入れた機内食の提供を念頭に、全日空(All Nippon AirwaysANA)と既に業務提携している。イスラム教徒の宿泊客を取り込みたい有名ホテルの多くも、バダウィ氏にアドバイスを求めて訪ねてくるという。

 バダウィ氏によると、日本は取り組みの開始が遅かったが、今後の見通しははっきりしているという。旅行好きなイスラム教徒は日本を訪れるようになり、最終的に6000億ドル(約60兆円)規模とされるイスラム教徒の旅行関連市場で、日本はより大きな分け前にありつくことができるようになるだろうと考えている。

 徐々にではあるものの、こうした取り組みは全国各地で見られるようになってきている。関西国際空港など主要空港に祈とう室が設置されているほか、あるテレビ報道によると、一部空港ではイスラム教徒のお土産向けに国産の絹で作られたヒジャブが販売されているという。