【7月28日 AFP】ブラジルで猟師2人が別々にオオアリクイに襲われ死亡する事例が発生し、オオアリクイの生息地の減少と、人間が危害を受ける遭遇リスクの増加を研究者らが懸念している。

 長い鼻と長い体毛が特徴的なオオアリクイは体長1.2~2メートル、体重45キロほど。森林破壊と人間の居住域の拡大がオオアリクイの生息地を奪っているとして国際自然保護連合(International Union for Conservation of NatureIUCN)は、絶滅の危険が増大している「危急種」に指定している。

 通常は人間に対して攻撃的な態度はとらないが、視力が弱く、おびえたときには前足にあるポケットナイフほどの長さの鉤爪(かぎづめ)をふりかざして防衛行動に出る。

 辺境医療と環境医学に関する米学会誌「ウィルダネス・アンド・エンバイロメンタル・メディスン(Wilderness and Environmental Medicine)」は12月発行予定の印刷版に先立ち今月発表した電子版に、オオアリクイが人間に致命傷を与えた2つの事例研究に関する論文を掲載した。

 論文の主著者であるサンパウロ州立パウリスタ大学(Universidade Estadual PaulistaUnesp)ボツカツ校医学部(Faculdade de Medicina de Botucatu)のビダル・ハダッド(Vidal Haddad)氏はAFPの取材に対し、両方とも被害者は農民で狩りをしていたところを、けがをしたもしくは窮地に陥ったオオアリクイに襲われたと説明した。

 ハダッド氏はまた、オオアリクイがそうした攻撃的な行動に出ることは珍しいが、人間は野生動物に十分な広さの生息地を与える必要があることを示す重要な事例だと強調した。

 IUCNによると野生のオオアリクイの個体数は、生息地の消失や交通事故、狩猟、サトウキビ・プランテーションによる焼き畑などにより、ここ10年で約30%減少し、現在は中南米の一部に約5000頭が生息するのみの状況だという。

 米アリゾナ(Arizona)州ツーソン(Tucson)にあるリードパーク動物園(Reid Park Zoo)の飼育員レベッカ・ローシー(Rebecca Lohse)氏は、飼育下のオオアリクイは上空の飛行機の音や機械音に驚きやすく、防衛行動として後ろ足で立ち上がり、鉤爪がある前足をかくように振ると説明する。その前足は「驚くほど筋肉が発達していて、鉤爪は10センチ以上ある」という。(c)AFP/Kerry SHERIDAN