【7月24日 AFP】ナンキョクオットセイのコロニー(集団繁殖地)が気候変動が原因とみられる餌不足で規模が縮小し、生態にも明らかな変化が現れているとする研究論文が23日、英科学誌ネイチャー(Nature)に掲載された。

 論文によると、南大西洋の英領サウスジョージア(South Georgia)島に生息するナンキョクオットセイの子どもの出生時平均体重は減少傾向にある。繁殖可能な成体も個体数が減少しているが、繁殖可能年齢は上昇しているという。さらに、コロニー内で成体まで成長し繁殖を行うのは、体の大きな個体だけになっている。

 こうした変化は、長期的な餌不足状態が継続した場合に生物でみられる典型的な兆候だ。最近ではナンキョクオットセイが主食とする小型の甲殻類、ナンキョクオキアミの減少も同時に確認されている。

 論文は、これらの傾向を南大西洋地域における気温上昇や海氷の減少と関連付け「ナンキョクオットセイは気候変動による餌の減少にともない、出生時体重も大幅に減少した」と記している。

 また、これまでの27年間で子育て中の雌の成体数が24%も減少したという。さらに子育て中の雌にみられるもう1つの変化は、両親から受け継いだ遺伝子の多様性の指標となる「ヘテロ接合度」が高いという点だ。ヘテロ接合度が高いほど、環境変化への適応能力も高くなる。

 19世紀にはナンキョクオットセイの皮を目当てとした乱獲が行われたために、ナンキョクオットセイは絶滅の危機近くまで生息数が激減した。その後は個体数の回復が続いていたが、論文によれば再び個体数は減少に転じている。(c)AFP/Mariette LE ROUX