【7月23日 AFP】ゾウはこれまで生物種で確認された中で最も強力な嗅覚の持ち主の可能性があるとする東京大学(University of Tokyo)の研究チームの論文が、22日の米科学誌「ゲノム・リサーチ(Genome Research)」に掲載された。

 論文によると、アフリカゾウのゲノム(全遺伝情報)には、においを感じ取る嗅覚受容体の遺伝子が2000個近く含まれており、これは動物の中で最多という。これは、ゾウの嗅覚能力が人間の鼻の5倍、イヌの鼻の2倍で、動物界でこれまで最も優れた嗅覚の持ち主とされていたラットの嗅覚さえもしのぐことを意味する。

 論文の主執筆者である東大の新村芳人(Yoshihito Niimura)氏は、ゾウの鼻はただ長いだけではなく、卓越した能力も有しているようだと話している。

 嗅覚受容体遺伝子がどのように機能するかについてはよく分かっていないものの、ゾウが長年にわたり生息環境の中で生き抜き、進むべき道を選ぶ助けになってきたと思われる。動物は嗅覚能力を頼りにして仲間や餌を見つけたり、捕食動物から逃れたりすることができる。

 研究チームはゾウの嗅覚受容体遺伝子を、ウマ、ウサギ、モルモット、ウシ、ネズミ、チンパンジーなど13種の動物の遺伝子と比較した。すると、霊長類と人間が持つ嗅覚受容体遺伝子の数は、他の動物種に比べて非常に少ないことが分かった。これは人間の視力が向上したために、嗅覚への依存度が減少した結果かもしれないと、新村氏は指摘している。

 今回の研究は、科学技術振興機構(Japan Science and Technology Agency)と日本学術振興会(Japan Society for the Promotion of Science)科学研究費助成事業より資金供与を受けて行われた。(c)AFP