■人種への考えが変化

 英国人と日本人の親を持つ歌手・女優のベッキー(Becky)も、モデルのような容姿を持つスーパースターの一人。また片親がフランス人のニュースキャスターでタレントの滝川クリステル(Christel Takigawa)は、2020年東京五輪招致団の一員として「Cool Tokyo」をアピールし、開催権獲得の一助となった。

 日本が鎖国をやめ国外に門戸を開いたのは19世紀半ば。現在の人口1億2700万人のうちの外国人の割合は、日本で生まれながら日本国籍を持たない人々を含めてもわずか2%未満だ。そんな国でハーフの芸能人らが広く人気を博しているのは、日本人の見方に変化が生じていることの表れといえる。

 社会学者の宮島喬(Takashi Miyajima)氏によると、外国人と日本人の親を持つ人々はかつて日本で蔑視されていたが、今では海外の芸能人は手の届かない人々であるかのようにもてはやされており、彼らが「肯定的な差別」から恩恵を得ているとさえも言えるという。

 確かに今日では、いわゆる「ハーフタレント」が出演していないテレビ番組を見ることはまれだ。これは日本における顕著な変化といえるだろう。

 また自身も多くのテレビ出演をこなす心理学者の晴香葉子(Yoko Haruka)氏は、若い日本人女性がローラのようになりたがって同じ服やバッグを買い求めるようになったと説明する。また、長い脚、小さい顔といった外国人そのもののスタイルを持ちながらも、羨望(せんぼう)の対象ではなく、親近感を覚えさせるアイドルとなっていることも指摘した。

 トレードマークとなった頬をぷくっと膨らませた表情、変わった言葉遣い、思わずつられてしまうくすくす笑い、気負いのない魅力で、日本で最も有名な「イットガール」として大勢のファンを獲得し、大ブレイクしたローラ。彼女は日本人の受け止め方の変化が、日本に良い影響を与えると信じているという。

 花柄のトップスにスキニーデニムで取材に応じたローラは、国籍は重要ではないと語った。以前は、日本人はオープンさに欠け、もっと陽気になればいいと感じていたというが、「最近日本が明るくなったのかな」と感じるようになったという。

「私の喋り方をマネしてくれる人がいると嬉しいの」「一つでも(日本に)協力できて、人のプラスになれるように貢献できればいいなと思って」

 日本人とロシア人との間に生まれた母親と、バングラデシュ人の父親を持つローラは、幼少期に言葉の壁を乗り越える助けになったのは、自分のエキセントリックな部分だったと話す。小学生の時には、新しい制服と間違えてパジャマを着て登校したこともあったという。

「普通はコミュニケーションができないと悩むけど、ちっちゃい時にそういう思い出は一個もないの。友達とお部屋でバービー人形で遊んで、次の日は男の子の友達と川に行ってザリガニを釣ったりカメと遊んだりとか。ジェスチャーが多いのはそのせいかも。友達は自然といっぱいいたの」