【7月22日 AFP】中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory SyndromeMERS)を引き起こすウイルス「MERS-CoV」に感染したラクダの飼育舎の空気からウイルスの遺伝子の断片を発見したという研究が、22日の米国微生物学会(American Society for Microbiology)のオンラインジャーナル「mBio」に発表された。

 研究を発表したサウジアラビアの研究チームは、空気感染の可能性を検討するための追加調査を呼び掛けている。

 11日の世界保健機関(World Health OrganizationWHO)の最新情報によると、2012年に初めて報告されたMERSのこれまでの感染者は699人。そのうち209人が死亡している。

■空気感染の可能性は?

 サウジアラビア・ジッダ(Jeddah)のアブドルアジズ国王大学(King Abdulaziz University)のエサム・アズハル(Esam Azhar)准教授(医科ウイルス学)率いる研究チームは、MERSで死亡した男性の所有するラクダ小屋で採取した空気サンプルを分析した。

 死亡した男性の飼育していたラクダのうち4頭からは鼻汁などのMERSの症状が確認されており、男性は発症する1週間前に、病気になったラクダの鼻に薬を塗っていたことが分かっている。

 小屋で飼われていたラクダを昨年11月7日に検査したところMERS-CoVの陽性反応が出た。研究によると、同じ日に小屋で採取した空気のサンプルからウイルスの遺伝子の断片が検出され、分析した結果、発症したラクダや所有者の男性から見つかったウイルスの遺伝子配列と一致したという。

 一方で、翌日以降に採取した空気のサンプルからはウイルスの痕跡は見つからなかった。この結果についてアズハル氏は、ウイルスが短期間で減少するか、あるいは一時的にしか空気中に存在できないことを意味するのかもしれないと述べている。(c)AFP