【7月22日 AFP】国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)は21日に新たに発表した報告書で、イランが先に欧米など6か国と結んだ暫定合意の内容を履行し、最も問題視されている核物質の処理を完了したと発表した。

 国連安全保障理事会(UN Security Council)の常任理事国(米英中仏露)にドイツを加えた6か国、いわゆる「P5+1」とイランは先週末、永続的な合意の締結期限を4か月延長したばかり。AFPが確認したこの報告書によると、IAEAはイランが国際社会と合意内容の履行を継続していると報告した。

 昨年11月に主要国とイランが結んだ「ジュネーブ(Geneva)合意」に基づき、主要国がイランに科している厳しい経済制裁を一部緩和する見返りに、イランは6か月間一部の核開発活動を凍結すると約束していた。

 IAEAによると、イランは今月20日の期限までに、保有している濃縮度20%のウランの半分を5%程度にまで希釈し、残り半分については酸化ウランへの転換を済ませていたという。さらに、5%を超えるウラン濃縮活動はいかなる施設でも行っていないとしている。

 これは、イランが核兵器製造を企図しているのではないかという、欧米がかねて懸念し、イラン側は否定し続けてきた問題の緩和につながる重要な一歩といえる。今年1月以降イランは、昨年11月のジュネーブ合意で定められた義務を一貫して履行してきている。

 核爆弾を製造するにはウランを90%まで濃縮しなければならないが、濃縮度20%のウランでもわずかな手を加えれば兵器レベルの物質が製造可能となる。これに対し濃縮度5%のウランは、原子炉で燃料として多用されている。

 イランはこれまで、同国の核計画は平和利用だけを目的としており、濃縮ウランはブシェール(Bushehr)原子力発電所や今後建設する原発で燃料として使用すると主張し続けてきた。

 この報告書の発表に先立ちイランと6か国は、永続的な合意の締結期限を11月24日まで延期することに合意していた。

 当初、交渉期限は今月20日とされていたが、その前日の19日にオーストリア・ウィーン(Vienna)で開かれた6回目の協議後に、交渉の中心となっている欧州連合(EU)のキャサリン・アシュトン(Catherine Ashton)外交安全保障上級代表(EU外相)は、「具体的な進展」があったものの、「複数の中核的な課題で深刻な隔たりが残っている」と述べていた。(c)AFP/Sim Sim WISSGOTT