【7月21日 AFP】乗客乗員298人全員が死亡したウクライナ東部でのマレーシア航空機撃墜事件をめぐって、世界の指導者たちが国際調査団の現地入りを強く要求し、米国がロシアへ非難の矛先を向ける中、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)露大統領は調査への協力を約束した。

 マレーシア航空MH17便の撃墜に使用されたミサイルについては、ジョン・ケリー(John Kerry)米国務長官が、「ロシアから(親露派であるウクライナの)分離独立派の手に渡った」ものだとする米政府の見解を発表し、国際社会から怒りの声が上がっていた。プーチン露大統領の発言は、これを沈静化させる目的があるとみられる。

 証拠隠滅の可能性や、犠牲者の遺体収容、さらにはブラックボックスの回収が懸念される中、国連安保理はウクライナからの独立を掲げる同国の親露派に対し、同独立派が掌握するウクライナ東部の墜落現場への「無制限の立ち入り」を要求する決議案を21日に審議する。

 そうした中、オランダのマルク・ルッテ(Mark Rutte)首相との電話会談で、プーチン露大統領は遺体収容とブラックボックスの回収への「全面的な協力」を約束。この事故でオランダからは最多の犠牲者が出ている。

 またオランダに次いで犠牲者が多かったオーストラリアのトニー・アボット(Tony Abbott)首相もプーチン氏と電話会談。アボット首相は詳細な内容については明かさなかったが「(プーチン氏は)まったく正しいことを述べた。次は、その言葉通りに対応してほしい」と豪ラジオに語った。

 ウクライナ東部で前週17日に墜落したマレーシア航空MH17便は地対空ミサイルで撃墜されたとみられており、開始から3か月に及んでいるウクライナ政府と親露派の衝突をいっそう危険にさらしている。

 ウクライナの親露派によってマレーシア機が撃墜されたことを示す証拠が増えるにつれ、ウクライナの将来をめぐる駆け引きですでに悪化していた東西陣営の関係は、危機的状況にまで達しつつある。

■国連安保理で決議採択へ

 ウクライナ政府は新たに、墜落機のブラックボックスを国際監視団から隠ぺいしようと画策する親露派の通話を傍受したとする録音音声を公開。また同じくウクライナ政府が公開した親露派司令官とロシアの工作員の通話とされる音声については、米政府が本物だとの見解を示した。

 しかしロシアの高官や国営メディアは、マレーシア機撃墜はウクライナ親露派を非難するためにウクライナの新政権が仕組んだものだと主張した。

 一方、親露派はブラックボックスと思われるものを回収したと発表し「国際調査団が到着した時に渡す」と約束した。また20日には「専門家が到着するまで」の一時的措置として約200人の遺体を保冷貨車に積み込み移動させたと発表した。

 しかしウクライナ東部におけるウクライナ軍と親露派の戦闘は続いており、政府は調査団の現地入りについて安全を保証できないとしている。

 そうした中、21日にはオランダの専門家らが現地に到着する予定。また同日、オーストラリアは、ロシアも常任理事国として拒否権を持つ国連安保理に墜落現場への無制限立ち入りを求める決議案を提出している。(c)AFP/Stephane ORJOLLET with Hui Min NEO in Kiev