■賛成派と反対派の根強い対立

 モンサントの欧州広報担当、ブランドン・ミチェナー(Brandon Mitchener)氏は、欧州の遺伝子組み換え作物に対する嫌悪感の種は1990年代にまかれたと指摘する。その種とは、遺伝子組み換え技術が出現した時期に、遺伝子組み換えに反対の立場を取るドイツの緑の党の力が強かったこと、英国で牛海綿状脳症(狂牛病、BSE)問題が発生したことだという。

 ミチェナー氏は、欧州食品安全機関(European Food Safety AuthorityEFSA)は米食品医薬品局(US Food and Drug AdministrationFDA)と異なり、産業界の手先のような存在としてみられたり、軽視されたりすることが多いと説明する。「欧州におけるバイオ技術の悲劇は誰もEFSAの主張に耳を傾けないことだ」

 EFSAは、BSEによる混乱への対処などを目的に設立された機関で、遺伝子組み換え作物には危険性はないと一貫して主張してきた。

 遺伝子組み換え技術に賛成する科学者らは、遺伝子組み換えによる健康や環境に対するリスクが、突然変異を利用した作物の品種改良が持つリスクより高いことはないと主張する。

 英ロザムステッド研究所(Rothamsted Research Institute)のヒュー・ジョーンズ(Huw Jones)氏は「実際には、遺伝子組み換えは大半の育種よりも安全だ。どういった性質の遺伝子を導入するのかが明確で、ランダムな要素が(大半の育種よりも)かなり少ない」と説明した。

 一方、反対派の環境保護団体グリーンピース(Greenpeace)は、遺伝子組み換えは安全とする科学的な合意は「単なる作り話」とはねつける。

 グリーンピースのEU農業政策部門責任者、マルコ・コンティエロ(Marco Contiero)氏は、「遺伝子組み換え作物は『解決策』として示されているが、実際は問題そのもの。現代の大規模な農業システムの副産物であり、環境を破壊するものだ」と指摘している。

 グリーンピースによると、モンサントやドイツのバイエル(Bayer)といった農業・化学大手では、最も単純な遺伝子組み換え種子の開発でも約2億ドル(約200億円)のコストが生じているとし、これを回収するために積極的なマーケティングと市場の独占を行っていると説明した。(c)AFP/Eric RANDOLPH